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内容説明
武器は天与の美貌、爽やかな弁舌、鮮やかな模倣の才。貧しい青年クルルは子供の頃のずる休みと同様、仮病をつかって徴兵検査をくぐり抜け、憧れのパリで高級ホテルのエレベーターボーイとして雇われる。そして宿泊客の美しい女性作家に誘惑され、彼女の寝室に忍びこむと……。冴えわたる筆で繰り広げられる厖大な語りと騙り、これぞマンの真骨頂。『魔の山』と好一対の傑作ピカレスク・ロマン。この圧倒的な面白さ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
28
天から与えられたような美貌、迫真に迫る演技力を見せる深層演技力の高さ、知識と饒舌で人を煙に巻く美声の持ち主である詐欺師、フェーリクス・クルル。その弁舌で兵役を逃れ、ホテルの使用人、(偽名)アルマンとなった彼は謎めいた人妻と逢瀬を重ねる。初めての女の神秘と変わりやすい思惑に困惑しながらも詐欺の手口を磨く彼の姿に引き込まれます。異国の言葉をカタカナで統一することで表現していることが新鮮でした。2013/03/05
テイネハイランド
16
図書館本。トーマス・マンの小説を読むのは「ヴェネツィアに死す」以来久しぶりです。自伝のように一人称で過去の自分自身のエピソードを振り返る小説で、詐欺師というタイトルからわかるように、イケメンではあってもモラル意識に欠ける悪い男(でも理屈っぽい)が主人公なのが本書の特徴です。過去のエピソードの描写がとても濃厚で、いろいろ細かな部分にピントが当たっていてさすが文豪の作品は一味違うなと感心しながら読んでいました。その一例をあげれば第二部第5章の懲役検査のシーンで、とても臨場感がある感じに描かれています。2024/12/26
syota
9
トーマス・マン3作目。少年時代を回顧する序盤こそ動きが少ないが、父が死んだ中盤からは舞台も大きく動き、「ヴィルヘルム・マイスター」を思わせる波瀾万丈の青春ドラマに突入する。主人公フェーリクスが当初から若さに似合わぬ冷徹な見通しを持ち、沈着かつ大胆に振る舞っている点がヴィルヘルムと違うところ。理屈っぽくてちょっと斜に構えた一人称の語りが特徴だが、山場では大きく盛り上がり、小説としての面白さは抜群。2015/05/26
ぱせり
8
フェーリクス・クルル、コソ泥で詐欺師で、口から先に生まれかと思うほどに冗舌で、自信満々のうぬぼれや。彼の旅に同行するのはなんて楽しい。最後には、旅の途中で置いてきぼりを喰わされるってわかっていてもね。2020/08/17
壱萬参仟縁
8
巻末にあるように、ジプシーとか癇癪は時代背景を語る言葉で、現代はデリカシーが必要なようだ。悪漢小説は独語シェルメンロマーン(327ページ)。「私の幸福はいつも、大きく欠けるところのない広大なものに向かった。それは他の人が探し求めないような所に、繊細で薬味のきいた妙味を見出した」(89ページ)。広大にして繊細。素晴らしい。「人生を判断し評価する権利を、自分から進んで故郷に認める」(124ページ)。故郷は縛りがないようでいてどこかしこに制約という箍(たが)があるんじゃないか。評者の研究も結局、この箍に従属か。2013/01/28
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