内容説明
嫡男久太郎の婚姻の日が近づいていた。相手は、珠世の夫伴之助に苛酷な陰働きを命じた前老中水野忠邦に連なる家の娘、鷹姫さま。祝言の日までの心労、婚礼の場での思わぬ騒動、そして次男久之助も人生の岐路を迎えて──。家族が増えた矢島家では、喜びも増え、苦労も増える。姑となった珠世に安寧の日々は訪れるのだろうか。人情と機智にホロリとさせられる、好評シリーズ第五弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
79
長男も次男も、矢島家とは曰くのある娘を嫁に迎える。新しい家族、難しいお役目。今回は珠世の心を揺さぶる人物も現れてどきどき。季節の移ろいや折々の行事が細やかに綴られるのもこのシリーズの魅力だが、この巻では人生の大きな移り変わりが描かれている。嬉しさと淋しさとがないまぜの、目頭が熱くなる話だった。2019/07/06
さなごん
22
二つの巣立ちがメインだけど、ううん。たくさんの巣立ちが。そして、時代も少しずつ動き始めている。2015/09/20
はつばあば
18
時代物シリーズは一瞬の目も離せないほど虜にする。人の一生が辛さの中にも優しさとほっこりする笑窪に救われる。昔の大家族制度に弊害もあろうが、世帯交代というものがあった。高齢者の核家族の我が家には世帯交代など夢・・空家になるに任せるか・・。2014/04/04
ふう
16
4作目がなかったのでとばしてシリーズ5作目。 経緯がわからないまま(予想はしていましたが)、久之助の養子縁組や久太郎の婚姻の場面へ。 兄弟が母を思う気持ち、珠世が子を思う気持ちに感動してか、問題が起きたときの珠世の考え方や行動に感動してか、今回もひとりでに涙が…。 シリーズを通して、娘としての父への思いをはじめ、妻として母(姑)として家族に深く細やかな愛情を持って接する姿に、女性の素晴らしさを感じました。 家族以外の関わる人々をも大切にし、相手を思いやるほど自分が豊かになるのだと感じさせてくれました。2012/04/07
ぶんぶん
13
久し振りに読んでみました。相変わらず、上手いです。久太郎・恵以の結婚、多津の出産、など今回もみどころ満載です。長崎に向かう武士が母に寄せる心情と、珠世に対する恋情が淡く交差する「蛹のままで」が秀逸です。この作家は人情の機微を捉えるのが上手い人です。季節の移り変わり、家族の在り方、ちゃんと押さえている。ずっと読みたい作家です。2013/10/30