内容説明
宗教団体〈人類協会〉の総本部にいったんは温かく迎えられた英都大学推理小説研究会の一行だったが、殺人事件が突発するや問答無用の軟禁状態に。協会幹部は警察に通報せず自分たちで犯人を突き止めると宣言。自由を回復するため推理研のメンバーも助力を約すが、調査は思うように進まない。そして焦躁の一夜が明けた総本部に銃声が轟き、さらなる犠牲者の存在が明らかになった。抵抗運動も試みつつ真相究明に努める推理研会員。思いがけない人物の登場によって事態はまたも転回、謎は深まったかに思われたが。大いなる混沌に秩序をもたらす名推理、江神シリーズ第4作となる本格巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
461
面白かった。犯人指摘に至るロジックも、間違いなく好みだが"なぜ犯人はそこまで拳銃の使用に拘ったか?"の一点だけどうしても腑に落ちない。ここが解消されない事には、全てが探偵に事件を解決させる為に、逆算して事件を組み立てているような違和感を残す。フーダニットはこの匙加減が難しい。複数の事件と主要メンバーの活躍の多さ、青春度も高めと、好要素タップリにも関わらず、この一点で私の中では『孤島~』『双頭~』に一歩及んでいない。但し、読みごたえと読みやすさは抜群で、しっかり満足度を稼いでくれてもいる。最終長編熱望。2016/11/26
nobby
186
何か不思議に気軽に微笑ましく楽しめた上下巻での800頁強。教団の殺人を隠すべく理不尽さ極まりない対応にイライラするばかりだが、必死さが時に破天荒に繋がる脱走劇はコミカルさも加わり面白い。全く置き去りでの「読者への挑戦」以降の江神による颯爽とした真相解明はお見事!聖洞や消えた女児、11年前の殺人など怪しくも意味を探し得ない事柄が絡み合っていくのは感動もの。エピローグでようやく明らかになる教団の抱えていた事態には反面了承。江神の犯人に重ねる想いと自らの境遇に決着をつける様に、アリス曰くな性“寂”説が心に響く。2018/03/20
🐾Yoko Omoto🐾
166
後半はEMCメンバー冒険大活劇の如し展開から畳み掛けるように収束へ。ロジックの完成度では「双頭の悪魔」がやや優勢に感じるが、提示された全ての手掛かりが真相に向けて一直線上に並び、一つ一つ論理的且つ堅実に潰されていく様は前作に引けを取らぬほど美しい。その推理には憶測こそあれど曖昧さが微塵もないからだ。また真相は犯人当てにとどまらず、教団自体の謎も含まれておりラストまで気を抜けない贅沢さ。「わが身を切って犯人を射た」江神さんが教団を訪れた理由に最も驚かされ、最終章に向けての扉が確実に開かれた音を聞いた…。2014/09/25
ちょろこ
137
出たくない一冊。外部との連絡さえもとれない城での軟禁状態。そして銃声響き渡る次なる事件。協会は何か重大な事情を抱えているのか、もどかしさがつのるけれどじっくり味わいたい時間。時折挟まれるマリアパートは心情描写に詩的さも感じられる美しさ。不思議なマチが出てくる話、UFO談義、どれも飽きない面白さで物語の城から出たくない気持ちに。そんな時間が流れる傍らでやっぱり江神さんは全てを…。犯人は今ここにいます。走る緊張感、速る知りたい感。鮮やかな名推理に大満足。EMCメンバー、改めて良いな。時を止めたいぐらい好き。2021/12/29
gonta19
137
2011/1/29 Amazonより届く。 2019/6/25〜6/28 古典的な読者への挑戦状の後の怒涛の展開。花火のところはまだしも、なんども繰り返される伏線の回収は見事。学生アリスシリーズの第4弾で、次がラストらしいが、もう出版されたのかな。永らく積んでいたので、浦島太郎だ。2019/06/28
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