内容説明
幕府旗本の家に生まれた山岡鉄舟は、幼い頃から剣、禅、書の修行に励み、おのれを鍛えた。徳川慶喜の意向を受け、西郷隆盛と談判。和議をまとめ、江戸無血開城への道をつくった。朝敵であったにもかかわらず明治天皇の教育係にも任じられる。名誉、官位、金銭に執着することなく、生涯、清貧をつらぬいた。志高く、他人を思いやり、それでいて図太く堂々たる山岡鉄舟の人生は、日本人としての生き方とは何かを問いかける。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
B-Beat
39
◎江戸総攻撃の中止が決まった西郷と勝の会談。その会談を実現すべく文字通り東奔西走したのが山岡鉄太郎という人物。最近読んだ本で浪士組結成につき清河八郎とともに重要な役割を演じた人物でもあったと知る。身の丈6尺2寸(約188センチメートル)にして剣豪かつ酒豪の幕臣。読み始めて最初正直少々退屈の感なきにしもあらずだったが、清河八郎と睨みあう場面あたりから俄然面白くなった。清河八郎暗殺事件に絡み閉門謹慎。その間にも時代は旋回しこの男をまた必要とする時が来るのだろうか。そんな予感のもとあっと言う間に読み切る。2014/04/14
さと
38
周りの人間が何を思おうがどう感じようが一切関与せず、ただ己の心を満たすこと一念にのみ生きる鉄舟の、人としていかに器を深く大きくしていくか…。詰まるところ『今、ここ』に生きようとする姿のように感じた。 山本兼一氏の作品の数々に散りばめられている信条のようにも感じた。このところ、私は自ら創造した偏見と歪みだらけのマトリックスの中で生きていると気づいて呆れていたところだが、鉄舟が目指す、『目の前のことにのみ全身全霊を込める』という生き方こそ今の私の目指すところ。しかし人間は何と余計なことばかり考えるのか!呆れる2024/04/20
Taka
31
山岡鉄舟の伝記です。幕末は好きで新撰組や薩長の話しはよく読んだので、名前は知ってましたが、、さすが幕末の三舟と名を残すだけのことある人物ですね!すごい生き様です。早速下巻に取り掛かります!2017/12/18
里季
31
勝海舟、高橋泥舟と共に幕末三舟と称せられる山岡鉄舟の物語。武道に優れているのはもちろんのこと、禅の教えをよくし、その命をすべて世にささげるような生き方に感銘を受けた。しかも、それが無理して肩肘張ったり意地になったりせずに、自然に己の魂の向くままに生きていく。うならせる一冊であった。2013/09/09
だまし売りNo
30
大丈夫という質疑応答の無意味無責任さが描かれる。山岡鉄舟は剣術の稽古で倒されて気を失う。「だいじょうぶですか」と声をかけられて「だいじょうぶだ……」と答える。しかし、それは「答えたものの、本当にだいじょうぶかどうか、自分でもよくわからない」というものであった。「大丈夫か」と問われると反射的に「大丈夫」と答えてしまう傾向がある。それが誤りである。大丈夫かとの問いかけは無意味であり、大丈夫との回答を信用することは無責任である。これが日本人の悪いところであろう。2022/07/23