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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
105
原題は「トリス…の生涯と意見」であるので、彼自身が語ればいいのかもしれない。それにしても脱線につぐ脱線だ。彼の先達のフィールディングの方が私ははるかに好みだが、この下品さや世俗的な雰囲気やなんの教訓も含まれないところなど、作者は敢えてしたのだろうと思う。叔父が戦争で受けた傷や、トリストラムが不能になってしまうところなど、どうしてもそこにフォーカスがいってしまう意図はなんなのだろう。最後の種もしかけも…って、原文はわからないけど、あきらかに意味をかけているだろう。18世紀の生んだイギリスの鬼才だろうか。2016/04/30
のっち♬
77
「こは作品よりの逸脱にあらず、作品そのものなり」序盤のフランス旅行記からかなりの混沌ぶりを発揮、書き出しから一向に進まない「ボヘミア王とその七つの城の話」といい読み手を徹底的に翻弄してくる。中盤で戦争終結により趣味が枯渇したドウビー叔父が隣家の未亡人と恋に落ちる。マニアックな趣味にのめり込む様を例えた「道楽馬」という比喩が印象的で、シャンディ家の男子の生き様を端的に言い表している。未亡人が叔父の性的機能を気にしたり、種牛の逸話にもつれ込んだり、著者が牧師であることを忘れさせる猥雑さ。戯れ心は最後まで充満。2020/12/19
中玉ケビン砂糖
76
ズボラな性分もあって数か月またいでようやく読了──それにしても人をおちょくるのが大好きな自分にとってこの書はこの上なく飽きずに読めた──これは久しぶりの体験──朱牟田氏のこれでもかという脚注も面白い──「両端から燃え尽きる蝋燭でありたい」というルクセンブルクの言葉を愛好しているどっかのジャーナリストがいるが、スターン曰く「私は普通の燃え方でいいと思いますけどね」というそこはかとない皮肉がクール──リープクネヒトと一緒に溺死体となって報道人生をまっとうする時がまったくもって楽しみだ、、、2016/06/18
NAO
50
トリストラムは、家族ともども、叔父がかつて戦ったフランスの戦場へと旅する。この巻でも、話の中心はトリストラムではなく叔父。しかも、果てしなく広がっていくばかり。作者死亡により未完だが、この話書きつづけられていたとしたらどこまで続き、どのように完結したのだろうか。取りとめなく、つかみどころのないこの作品、「海鼠の化け物」とはよく言ったものだ。2016/04/07
zirou1984
28
作者の死によって物語は中断され、余りにも下らないジョークによって本書は終わる。結局最後までトリストラムの話は主流にならず、家族のドタバタ劇と時折顔を出す著者自身のメタ談義で終わった様な。そういえば下ネタ、伏字の量もかなりのもの。しかしセルバンテスやラブレーといった滑稽文学の先人達を意識しながらそこにキリスト教の神学論と西洋哲学の知識をコラージュ状に敷き詰めつつ、それを馬鹿馬鹿しく読ませるというのは驚愕である。「本書を執筆した時の作者の気持ちを答えよ」なんてセンター試験の問題が出たら解ける気がしないのだが。2013/05/03