内容説明
走行中の大型トレーラーが脱輪し、はずれたタイヤが歩道を歩く若い母親と子を直撃した。トレーラーの製造元ホープ自動車は、トレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張するが、社長の赤松は到底納得できない。独自に真相に迫ろうとする赤松を阻む、大企業の論理に。会社の経営は混迷を極め、家族からも孤立し、絶望のどん底に堕ちた赤松に、週刊誌記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。(講談社文庫)
目次
序 章 決して風化することのない、君の記憶┴第一章 人生最悪の日々┴第二章 ホープとドリーム┴第三章 温室栽培群像┴第四章 ハブ返せ!┴第五章 罪罰系迷門企業┴第六章 レジスタンス┴第七章 組織断面図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
708
下町ロケット、ロスジェネに次いでの池井戸作品。中小企業の意地と誇りをかけて大企業に挑むストーリーは下町ロケットとも相通じるものですが、上下巻分かれているだけあって細部まで緻密に丁寧に作り込まれています。上巻は大企業の論理の前に翻弄され、窮地に追い込まれていく過程がリアルに描かれていて胸が苦しくなるほどです。嫌な奴らは下町ロケットの比ではありません。読者も怒りを溜めに溜めて (笑)さあこれから…というところで上巻終了。もう続けて読むしかなくなるこの上手さ!さすがです。気になる感想は下巻で!2014/07/06
ヴェネツィア
693
どれもが基本的な構造が似ているために、ややマンネリ感に陥っていたのだが暫く時間を空けて読むと、やっぱり池井戸作品は面白い。これもまた、展開の先は予想されるし、おそらくはその通りの結末を迎えるのだろうが。この作品の新工夫は状況を一元化せずに多角化したことだろう。主軸は弱小の運送会社を営む赤松だが、これにホープ自動車の沢田、ホープ銀行の井といった視点が加わるばかりか、さらには赤松の子どもたちの小学校の問題までが関わってくるのである。下巻では予定調和の結末を迎えるのか、はたまた…。一気に下巻へ。2024/07/30
遥かなる想い
689
三菱自動車によるリコールをモデルにした小説。WOWOWでもドラマとして放映されて、評判をとったようだが、原作も会社における微妙な対立を描いている。2010/07/10
W-G
528
映画版をDVDで観た流れで再読。映画つまらなかったな…。まぁ盛り沢山な内容なので、だいぶ省略が必要なのもわかる。上巻のハイライトは、赤松運送がハブ返却を求めて動きだすあたりと、ラスボス的ポジションの狩野常務の登場。改めて読むと、主要人物の赤松社長と、ホープ銀行の井崎は一度も接触しないままだと気づく。群像劇としては池井戸作品の中で最も凝った造りではないだろうか。とにもかくにも、上巻では赤松運送も、プライベートでの赤松社長もやられっぱなし。もう一人の主人公である沢田にしても黒寄りのグレーな人物像だ。 2019/09/01
にいにい
490
またまた、池井戸潤さんの企業小説。実際の事件をもとにしたフィクション。結末は、想像できるけど、ページを捲る手が止まらない。財閥系自動車メーカーのリコール隠しと小学校での盗難事件が並行して進んでいく。コンプライアンスって何?企業にとって大事なものとは?を問いかける。赤松のカッコ良さと自分の利益しか考えられない者、間違ったプライドだけの者のやり取り、心の葛藤が見物。さ、下巻に行くぞ!同じ財閥系銀行の判断も興味津々。タイトルは、メルフェンチックで、悲惨な事故を想像できなかったけど、読んで直ぐ引き込まれる一冊。2014/06/18
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- DVD
- 恐怖の訪問者