内容説明
倒幕に揺れ動く幕末、若者たちは国の為に何をすべきかを模索していた。そんな中、東北の一小藩出身の杉浦透は、世間の流れに惑わされず昌平黌に入学し、学問の道に専念することを決意する。一方、水谷郷臣もまた、藩主の弟という立場に悩みながらも、己に忠実な生き方をしようと努力する。時代の動乱に巻き込まれながらも、懸命に生きる若者たちを描いた青春群像劇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソーダポップ
39
幕末期、東北の雄藩と境を接する中邑藩(なかむらはん)は勤王と佐幕の世を二分する激流に混迷を深めていた。学問に専念する事を決意する主人公杉浦透と、藩主の弟でありながら家臣となった水谷郷臣の二人は時代に対する目を持ちながら、その立場ゆえに苦悩を強いられていた。激動の時代に悩み戸惑う姿を描き出した秀作でした。このまま下巻へ突入。2022/07/23
シュラフ
23
「勤皇を叫び、佐幕を叫ぶ青年たちの大部分は、自分の心から叫び、信念によって行動するのではなく、接近しつつある大きな虚像の力に圧倒され、その不安と恐怖から遁れるために、虚像のふところにとびこんだり、反抗の気勢をあげたりしているのだ」幕末の尊王攘夷の思想による討幕・維新というのは、まさに集団の狂気が吹き荒れた時代。薩長の英傑が称えられて現代に至るが、その原動力は集団の狂気なのだから、一方で薩長の乱暴無慈悲に批判もある。結局のところ尊王攘夷に名を借りた権力闘争。「勝てば官軍」という言葉に庶民の冷静な視線がある。2018/09/18
ken_sakura
12
裏表紙の粗筋は茫洋と雲を掴むようだけど。面白い(^o^)/早くから当たりを引いた感触があるのが嬉しい。平成21年発行とあり、新装版のようです。そのせいか読み易い。下巻へ。2016/05/03
りんご
6
周五郎さんにしては珍しく幕末もの。 尊皇か佐幕かということで揺れ動く奥州の中邑藩。江戸の昌平坂学問所に入学した杉浦透。自分では政治に関わらないとするが,世の中の情勢をそうは許さない。彼はどう生きていくのか。。。2022/04/13
koba
6
★★☆☆☆2012/09/02