内容説明
倒幕の動きはさらに加速し、もはや止められないものになっていた。杉浦透は昌平黌から足が遠のいていることが国許に伝わり、藩籍を除かれ、退学することになる。一方、水谷郷臣は透と会った帰りに、昌平黌の学生であり、幕府護立の青竜組の面々に囲まれ……。激動の時代に生きる若者たちが、苦しみながらも人生に向き合う姿を描く、幕末ものの代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソーダポップ
32
討幕の動きはさらに加速し、もはや誰にも止められないものになっていた。幕府はいま自壊作用に憑かれていて王政復古というこの時代の狂気に、この国ぜんたいを包んで、非常な暴風雨が荒れ狂っていた。奥州の一小藩を舞台にした、権力や暴力の嵐の前で小さくまたたいている真実。これが、この小説「天地静大」のモチーフであると思いました。2022/07/30
シュラフ
23
人間は社会的動物だから生きにくい。おみさんは言う「当人にとっては自分の価値判断がなにより正しい。善悪の区別は集団生活の約束から生れたもので、「人間」そのものをつきつめて考えれば、そういう区別は存在しない。」市井の一自由人としての生を願ったおみさんも、藩という縛りの中で無念の切腹を余儀なくされる。希望は杉浦と ふく の若夫婦だろう。杉浦は佐幕・勤皇のどちらにもつかず学問を志して、ふくは杉浦との愛を大切する。善悪という価値判断にかかわらず人間は生きるということが「善」なのである、という山本周五郎のメッセージ。2018/09/20
ken_sakura
12
当たり(^o^)/読み終えて、満足のため息(^O^)甘くもなく辛くもなく、ただただ良かった。幕末の江戸を舞台にした青春群像劇。山本周五郎の小説は主人公辺りがやたらと重荷を背負っている印象があるけれど、群像劇のせいか、荷物が各登場人物に分散していて重くなく、山本周五郎にしては物語が明るめなのが嬉しかった。薦めてくれたおもしろ本棚の先生に感謝。2016/05/07
ソングライン
6
幕末、動乱期の政治、思想に縛られることなく決然と学問の道を貫く杉浦透、武士をすて料理人となり好きな女との生活を選ぶ吉岡市造そして政治に生きることを嫌いながらもその高い身分のため時世の犠牲となる水谷郷臣。武士の時代、封建社会が終わろうとする時に、自分の生きがいのため武士を捨て生きようとした若者たちの群像を描いた作品です。2017/10/24
koba
6
★★☆☆☆2012/09/07