内容説明
渾身の純文学長篇小説。台湾に暮らした日本女性の愛の手紙・日記。70年の時を経て甦る2人の女性の愛の人生。――女は思わず、海を振り返る。海に戻りたい。女は陸の世界におびえ、つぶやく。わたしは死なない。わたしは生きつづける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いくら
12
1931年ミーチャこと美世が台湾に住む明彦のもとへ嫁ぐことになり、やがて台湾での新婚生活が営まれる。読者はその様子をミーチャの明彦への書簡と日記、さらに三人称での文章で窺い知ることができる。慣れない外地での生活、体調不良、妻に多くを求める留守がちな夫、姑との確執と、わたしとしてはミーチャの同情。当時台湾で起こった抗日の霧社事件がどう関わっていくのか、また2005年にミーチャの姪リーリーが台湾へ行った理由なんなのか。とにかく下巻へ。2013/06/16
あおさわ
8
ただただ必死に生きるミーチャの姿が時に痛々しく時に哀しく生々しく、いじらしい。日本が占領していた当時の台湾で結婚生活を送る女性と、その数十年のちの姪の人生…まだ語られない部分が楽しみでもあり、不安にもなるのはなぜでしょう;2011/02/16
あ げ こ
5
会ったこともない、だが誰よりも近しい女性の、愛に自らの身を尽くした生を辿るために繋ぐ、遺された時間の断片。手紙に記された言葉、相手の心を燃やし続ける為に用いた言葉は、甘やかな夢が覚めた後、自らを痛ましい現実へと縛り付ける、残酷な誓約へと変わる。誓約を守り続けることこそが愛の証であると、苦しみも痛みも、すべて一人で抱え、男を愛する道を、彼女は自らに強いた。心を壊していく現実と、自らの死を見せることで、彼女に生を与えた偉大なるものたちの夢。過去に怯え、死を恐れ、生の孤独を選んだ女性たちは、どこへ流れ行くのか。2014/05/28
ophiuchi
4
日本に統治されていた時代の台湾が主な舞台。「あまりに野蛮」は日本軍のこと?この夫婦のこと?下巻がどんな話になるのか想像がつきません。2011/04/18
及川まゆみ
3
初津島作品。霧社事件が出てくるというので読むが…事件とどう関わるのか不明。ただこの時点では事件は終わっている。ミーチャの手紙が読ませるんだけど、生々しいことこの上なく、読んでいて恥ずかしくなる。まぁ夫に宛てたものだしね。で、現代でミーチャの足跡を追う姪のリーリー。といっても二人とも日本人で美世と茉莉子。なぜそんな名を(笑)。上巻のみでは話がさっぱりわかりません。ただでさえわかりにくい描写が多いのに。下巻に期待です。2015/08/07