内容説明
美しきシモネッタの死から一年、反目を強めていくいっぽうのパッツィ家とメディチ家。ついに復活祭のミサの席上、襲撃されジュリアーノが命を落とす。血で血を洗う抗争を冷徹にも思える目で見つめ、描き続けるボッティチェルリに驚く「私」――そして、傑作「ヴィーナスの誕生」が完成したのだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
62
パッツィ家の陰謀、コレラの流行からサヴォナローラの登場まで。次第に陰翳が深くなっていき、人心が乱れる花の都にボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」が光を差すのが鮮やかです。やはり美術論より社会経済史的な側面が面白いのは相変わらずですが、政治面でロレンツォのキャラクターが立ってきて、前二巻よりもさらに深みが増していると思います。さて、最終巻へ。2021/06/14
たかしくん。
31
傾き始める「フィオレンツェの春」の兆しが随所に現れてきます。パッツィの悲劇、疫病の流行、トルコのイタリア半島侵攻と続く中、孤独な当主ロレンツォの行動力で、フィオレンツェはまさに「春の戴冠」を振り絞るように咲かせます。そしてメインはやはり、サンドロの傑作「ヴィーナスの誕生」の完成!本著のキーワード、<神的なもの><永遠の花の香り>に満ちた作品であり、間違いなく次巻は、そのピークが崩れ落ちることとなるのでしょうね。今更ですが、たまに現れる登場人物「レオ」は、ダヴィンチのことですよね~。2016/07/17
chang_ume
9
「パッツィ家の陰謀」から世紀の大作《ヴィーナスの誕生》の完成まで。やや足踏みもあった前巻に比べて、政治陰謀劇あり、作品誕生ドラマありとテンポよいです。そして、今作品を通じた独特の読書体験、それは「ルネサンス当時の臨場感」であるとの印象を改めて強くする。まさしく、15世紀末フィレンツェの喧騒と不穏であり、ひとつの文化の盛りと滅びを追体験する感覚でしょう。新プラトン主義が説く〈神的なもの〉が今まさに現前した瞬間、キリスト的〈愛〉として《ヴィーナスの誕生》が生まれていく。なんて美しい物語だろうか。2020/03/06
ひまわり
9
パッツイ事件も小説になるとこんなにも人の狂気が描かれるのか。フィレンツェに陰りが見え始めるが、サンドロは「ビーナスの誕生」を発表する。「神的なもの」とは。それに取り込まれていくサンドロを静かに見守っている作者。3巻は政治の歴史としても動いていた時期でページを繰るのが早くなった。あと1冊!サヴォナローラが出てくるだろう。・・・苦しそうだ。2015/08/31
BIN
6
メディチ家と伍するパッツィ家の陰謀(乱というべきか)、コレラの流行、ローマ法王との戦など花の都フィレンチェの翳りが大きくなった。そんな中、サンドロ(ボッティチェリ)は進化し、ついに「ヴィーナスの誕生」をあっさり発表した感でした。次の最終巻でどのような展開になるのか、あまりいい感じではないだろうが気になります。2023/02/04