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内容説明
あいつぐ異常気象・疫病・飢饉・大地震、そして承久の乱。荒廃する国土をもたらしたのは、正法が廃れ、邪法=専修念仏がはびこる仏教界の混迷である。日蓮は、社会の安穏実現をめざし、具体的な改善策を「勘文」として鎌倉幕府に提出したのが『立正安国論』である。国家主義と結びついてきた問題の書を虚心坦懐に読み、「先ず国家を祈って須らく仏法を立つべし」の真意を探る。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
非日常口
23
宗派として人名が残る宗教は、ある所で理屈の外に向かうものがある。それは往々に解釈を過激なものへと飛躍させうる危険性を孕むが、他方で信仰の強さにも結びつく。視野狭窄と敬虔な信仰は紙一重なのかもしれない。理性重視の近代的現象が様々な社会問題を引き起こす現在において逃げ場が見えなくなり出す人が出始めている。そうした時、極端に内側に向かえば精神病に、外部を求めるなら宗教に行く気がする。ナショナリズムの高揚や海外への進出など今後起きうる問題を考えるにプレモダンを再度把握しておくことが必要だが、参考になるかもな一冊。2017/02/21
記憶喪失した男
9
日蓮の代表作である。鎌倉時代、法然が「選択本願念仏集」で「浄土三部経」を重要視することを提唱したことに反論した文章である。この書物は法然への批判書として書かれており、いわゆる特に「法華経」を重んじるようなことはそんなに書いてない。2016/09/30
壱萬弐仟縁
7
日蓮は反権力運動とも関わった(11ページ)。1260年執筆(29ページ)。立正とは専修念仏を禁止し、既存仏教を保証すること(31ページ解説)。安国とは国土と人民への安穏(38ページ)。既存仏教で安穏をとの主張だ。1257年にも東日本を大地震による飢餓と寒気、長雨が襲った(47ページ)。正嘉の飢饉(66ページ)である。天下の泰平と国土の安穏(134ページ)。君臣も民衆も希求したことであった。『歎異抄』と並び称される5本の指に入る仏書(188ページ)。イラク戦争で本書が取沙汰された『現代思想』増刊を想起した。2012/12/31
keint
5
日本の名著「日蓮」では現代語訳のみだったため、原文と解説を参考すべく読んだ。 解説は日蓮の思想だけではなく、立正安国論の通説への批判もあるのでためになった。2019/12/05
マカロニ マカロン
5
個人の感想です:B。立正安国論は日蓮39歳の1260年に鎌倉幕府の最高権力者北条時頼に提出した国家諌暁の書状。漢文で書かれていて原文はとても読めたものではない。この本は読み下し文と現代語訳、解説で構成されていて理解しやすい。念仏者を弾圧せよという日蓮の過激な主張はともかくとして、読み下し文を声に出して読むと、韻を踏んだ対句がふんだんに使われた名調子で読むことができる素晴らしい名文だと思った。「蒼蝿(ソウヨウ)驥尾(キビ)に附して万里を渡り、碧蘿松頭(ヘキウショウトウ)に懸かりて千尋(センジン)を延ぶ」2016/09/02