内容説明
元女官長の不敬事件、虎ノ門事件、田中正造直訴事件、あるいは明治憲法制定史、昭和天皇「独白録」の弁明など、近代天皇制をめぐる事件に「精神鑑定のポリティクス」という補助線を引くと、いったい何が見えてくるか。「反・皇室分子=狂人」というレッテル貼り。そして、「狂気の捏造」が君主に向けられる恐れはなかったのか? 独自の視点で読み解くスリリングな近代日本史。(講談社学術文庫)
目次
第一章 オカルティズムと宮廷人
元女官長の不敬事件/高松宮の神政を霊示する/入院は、検事総長が決定した/島津ハルは「快癒」する/天津教と神政竜神会は起訴された/「皇室関係事犯者への常套的な処置」
第二章 虎ノ門のテロリスト
皇太子をねらったステッキ銃/「七度生まれ変わっても、大逆事件を繰り返す」/ねがわくば狂人であってほしい/「精神的には何等欠陥を認めず」/他
第三章 石と煙突のファナティケル
ねらわれたパレード/精神分裂症、そして二年の保護処分/アブノーマルじゃないという医者がいた/不敬罪観念の戦後史/皇居をさわがすエントツ男/他
第四章 フレーム・アップができるまで
皇室警備と「精神障害者」/「要注意者」のカードとプライバシー/昔は、ちゃんと警戒したものだ/いつから精神異常者はチェックされだしたのか/他
第五章 ニコライをおそったもの
司法の伝説と大津事件/津田三蔵は西郷隆盛の帰還をおそれていた?/津田三蔵ははたして正常だったのか/当初は、「精神惑乱者」だといわれていた/無罪の可能性をつたえる記事/大津事件と虎ノ門事件のあいだ/ソビエト政権と精神医学
第六章 相馬事件というスキャンダル
藩主を座敷牢に幽閉する/医学が不要だとされたころ/診断書は、本人をみずに書かれていた/司法精神鑑定へいたる道/他
第七章 マッカーサーに語ったこと
「私は……全責任を負う」という物語/ふたつの天皇像/天皇に単独会見した男/開戦に反対すれば……「独白録」は弁明する/御用邸での御静養/「脳力」が「衰え」た……
第八章 皇位簒奪というイリュージョン
二・二六事件と秩父宮の流言飛語/「蹶起の際は一中隊を引率して迎えに来い」/平泉澄もうろたえた?/秩父宮をとりかこむ警戒陣/他
第九章 ルードヴィヒの王国から
海の向こうの狂える王/「人民」を皇室からきりはなせ/プロイセンの内紛が明治憲法におよぼす影/「バイエルン憲法を典型として作成された憲法」/他
第十章 ノイシュバンシュタインの物語
音楽から建築へ/フランス絶対王政のまがいもの/伊藤博文と君主権/君主権の暴走をふせぐためのてだてとは?/他
原本あとがき
学術文庫版へのあとがき
感想・レビュー
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HANA
ばんだねいっぺい
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渋江照彦
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