講談社学術文庫<br> 狂気と王権

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講談社学術文庫
狂気と王権

  • 著者名:井上章一【著】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 講談社(2014/11発売)
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  • ISBN:9784061598607

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内容説明

元女官長の不敬事件、虎ノ門事件、田中正造直訴事件、あるいは明治憲法制定史、昭和天皇「独白録」の弁明など、近代天皇制をめぐる事件に「精神鑑定のポリティクス」という補助線を引くと、いったい何が見えてくるか。「反・皇室分子=狂人」というレッテル貼り。そして、「狂気の捏造」が君主に向けられる恐れはなかったのか? 独自の視点で読み解くスリリングな近代日本史。(講談社学術文庫)

目次

第一章 オカルティズムと宮廷人
元女官長の不敬事件/高松宮の神政を霊示する/入院は、検事総長が決定した/島津ハルは「快癒」する/天津教と神政竜神会は起訴された/「皇室関係事犯者への常套的な処置」
第二章 虎ノ門のテロリスト
皇太子をねらったステッキ銃/「七度生まれ変わっても、大逆事件を繰り返す」/ねがわくば狂人であってほしい/「精神的には何等欠陥を認めず」/他
第三章 石と煙突のファナティケル
ねらわれたパレード/精神分裂症、そして二年の保護処分/アブノーマルじゃないという医者がいた/不敬罪観念の戦後史/皇居をさわがすエントツ男/他
第四章 フレーム・アップができるまで
皇室警備と「精神障害者」/「要注意者」のカードとプライバシー/昔は、ちゃんと警戒したものだ/いつから精神異常者はチェックされだしたのか/他
第五章 ニコライをおそったもの
司法の伝説と大津事件/津田三蔵は西郷隆盛の帰還をおそれていた?/津田三蔵ははたして正常だったのか/当初は、「精神惑乱者」だといわれていた/無罪の可能性をつたえる記事/大津事件と虎ノ門事件のあいだ/ソビエト政権と精神医学
第六章 相馬事件というスキャンダル
藩主を座敷牢に幽閉する/医学が不要だとされたころ/診断書は、本人をみずに書かれていた/司法精神鑑定へいたる道/他
第七章 マッカーサーに語ったこと
「私は……全責任を負う」という物語/ふたつの天皇像/天皇に単独会見した男/開戦に反対すれば……「独白録」は弁明する/御用邸での御静養/「脳力」が「衰え」た……
第八章 皇位簒奪というイリュージョン
二・二六事件と秩父宮の流言飛語/「蹶起の際は一中隊を引率して迎えに来い」/平泉澄もうろたえた?/秩父宮をとりかこむ警戒陣/他
第九章 ルードヴィヒの王国から
海の向こうの狂える王/「人民」を皇室からきりはなせ/プロイセンの内紛が明治憲法におよぼす影/「バイエルン憲法を典型として作成された憲法」/他
第十章 ノイシュバンシュタインの物語
音楽から建築へ/フランス絶対王政のまがいもの/伊藤博文と君主権/君主権の暴走をふせぐためのてだてとは?/他
原本あとがき
学術文庫版へのあとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

62
あんな事をする人間が正常であるはずがない。犯罪の理由に狂気を見るのは現代マスコミでよくお目にかかる光景。本書は日本のテロとそれが社会的な狂気の関係について論じた一冊。虎ノ門事件から始まり元女官長府警事件という近代日本の不敬に纏わる事案を狂気というベールを降ろして幕にしようという思考。大津事件に関しては狂気の概念が外交や政治に左右される部分などは戦慄を覚える。その根は我々の中に残っている気もするが…。後半は近代日本の闇の部分に光を当てようとしているが、著者による予断が多く試論の域は出ていないかなあ。2023/11/09

ばんだねいっぺい

25
あとがきのとおり、古くて新しい問題である。そもそも、精神病でなければ、犯罪者足り得ないなどという言説すらあるなかで、どこで線引きするかは、時代時代の判断で積み重ねられてきたが、いまだに混迷のなかにあるかとは、思う。2023/12/28

中年サラリーマン

17
昭和天皇暗殺未遂の難波。彼は思想犯であることを主張するが検察は狂人として事件を処理したがる。思想犯の狂人へのレッテル貼りの時代。しかし、さらに前の時代の田中正造の直訴の直後彼を狂人とレッテル貼りした新聞はほとんどなかったし、大津事件の津田は素人目にはむしろ狂人では?と思うところもあったにせよ、常人として処理されていく。相馬事件もしかり。ここに明治維新を通した日本の精神鑑定の受容の歴史を著した本なのかなと思わせとても面白く読んでいた。が、それだけではなく精神鑑定を皇位継承とからませる仮説がとても面白かった。2014/05/05

Gen Kato

5
精神医学と精神病と天皇家と反皇室分子たちとを繋ぐもの。おもしろく惹き込まれ、最終章のルードヴィヒ2世に至って深く得心する。文庫版あとがきの梅原猛とのエピソードも好きです。2018/06/03

渋江照彦

5
非常に読みやすい本でした。紹介して下さった人からは「この先生は筆が立ち過ぎるんですよ」という旨のお話を事前に伺っていたのですが、成程と納得致しました。著者自身がおっしゃっておられる様に根拠は余り無いのですが、文章が巧みなのでついついのせられてしまう所があります。面白い作品だとは思いますので、興味のある人はお読みになると良いかも知れません。2015/06/26

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