内容説明
伴忍びの万蔵が、裏切りを働いているらしい。女忍者・小たまは、危険を省みず万蔵の元へ飛び込み、敵の正体を見極めようとする。老獪な家康は、真意を隠しながらも天下統一へ1歩ずつ近づいていく。豊臣の臣下として全力を尽くす福島正則だったが……。戦乱の世を駆ける美貌の女忍者の活躍を描く傑作長編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
124
あぁ、哀愁きわまる良いラスト!忍者小説には殺伐とした空気感が漂うものですが、本作はそんなハードボイルドを凌ぐ叙情に溢れていたように思います。武辺一筋の福島正則。老いと同時に来た泰平の世。往年の七本槍も平和を謳歌することなく凋落の一途。でも正則、愛嬌もあって哀愁もある。そして関ヶ原の戦火をくぐり抜けてきた小たまの暗躍の日々。華麗に跳ね、大胆に疾駆する。計算じゃない。奔放に忍ぶくノ一にこれまた惹き付けられる。天下の趨勢に翻弄された男達。その行方を見届けた忍びの女。ほろ苦さももはや粋。極上の忍者エンタメでした。2022/06/21
優希
54
徳川の天下統一が徐々に近づいてきました。裏切りを働いているらしい万蔵のもとに飛び込む小たま。敵の正体を見極めようとするためだったのですね。福島正則の最期も哀切を感じます。美貌の女忍者の行動を描きたかったのでしょうが、自分は1人の戦国武将の生き様として読みました。2023/04/06
金吾
25
○正則が輝いていた関ヶ原と力を失い忘れられていく晩年の対比が印象に残ります。三成や淀殿みたいに戦いを知らない人が指揮をすると戦争は勝てないことを痛感します。ラストは寂しいながらもいい感じでした。2022/06/03
あまね
21
下巻になると俄然面白くなります。関ヶ原ですからね!福島正則もぎゅーーーっとカッコよくなり、小たまの働きにも目が離せなくなります。以前読んだ『真田太平記』の忍びの働きの裏面を読んでいる楽しさを味わえました。最晩年の福島正則のお話は『そうだったら良いのに』と思える描写で、救いのあるラストで良かったです。2021/03/02
タツ フカガワ
20
一時は安芸広島49万石の大名となった福島正則は、零落して信州で死の床に。そこに小たまが現れる。25年ぶりの再会で「そちは、いったい、何者なのじゃ?」と訊かれ「殿さまと同じように、戦さの絶え果てたこの世には、無用の女にございます」と答える小たまにほろり。2020/03/21