内容説明
陰に陽につきまとってくる蔦代に腹を立て、無気味にさえ思いながらも、じっとその我儘に耐えてきた正子だが、ついに蔦代に絶交を宣言した。しかし、蔦代は一向に頓着しないどころか、再び正子の生活に泥足で踏み込んでくる。――雛妓(おしゃく)のころから一緒だった二人の女の宿命的な絡み合いと凄まじい愛憎の葛藤を、大正の初頭から終戦にかけての三十年の時の転変の中に描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
小梅
82
ここで終わるのかぁ〜と余韻に浸る。雛妓の頃から対照的な2人の美しい女性の物語。読了してみると、冒頭の金魚すくいのシーンが効いている。蔦代のしぶとさ、頭の回転の速さに呆れたり感心したり。ただ蔦代は正子を好きだったのは事実だろう。全編を通して着物と着付けや髪の結い方の描写が凄い。再現した舞台を観る機会があればなぁ〜鶴弥から貰った芝垣の地紋が浮き出た紋ちりめんに金色の小菊が飛んでいる、正子が黒に染めて仕立てた漆の着物が見てみたい!2018/04/26
カーミン
38
雛妓(おしゃく)の頃から一緒だった正子と蔦代。正子は堅気の宿屋を開き、蔦代は待合(まちあい)の女将となる。曲がったことや嘘が嫌いな正子は、嘘を本当だと言いくるめる蔦代に我慢できずに何度も絶好を言いわたすのだが、それでも蔦代は正子につきまとい、離れない。上巻ほどの豪華さはないものの、大正から終戦の時代を駆け抜ける美貌の女性二人の物語に惹きこまれていきます。2018/01/19
ヨーイチ
36
上巻に比べ下巻は分量も質も異なっている。初読時は下巻(昭和に入り軍部の台頭、テロ、空襲などで主人公の周辺が慌ただしくなる)になって面白くなったきたと云う印象があったが、今回は閉じては居るが江戸に通じる花柳界を丹念に「女の目」から活写している上巻が印象深い。有吉佐和子しか描けない物があったって事なのだろう。上巻で正子が初潮でしたしくじりを䔍代が庇ってあげる逸話が印象に残る。「不見転」と呼んで芸者の格を維持してきた花柳界を䔍代が個人主義、資本主義を体現して破壊していく物語って側面も見える。続く2017/04/24
ソーダポップ
35
下巻読了。作者の有吉佐和子さんは、花柳界にも精通していたようで、きっと芸者さんの生の声エピソードを反映させながら描いていたのだと思う。現在の人達には想像できないけど、描写がリアル分だけ貧しい家庭から売られてきた少女達が芸者になるという文化があったのだと再認識する。芸を磨き、教養を磨いて、パトロンを見つけて稼いで借金を返す。芝桜という作品は、可笑しみもあるけど、どんなに成功しても芸者の人生はパトロンで左右され、華やかな一方で、影のような哀しさがつきまとう、そんな悲哀も描かれた作品でした。2022/06/12
ココ
23
したたかな女。友達に持ったらどうだろう。ましてや愛憎入り混じる花柳界。離れたくても離れられない女同士の関係性に、疲れながらも、とても面白く読み進めた。続編を期待する終わり方。や~有吉佐和子は面白い!2025/11/07
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