内容説明
米倉涼子主演ドラマの原作。割烹旅館で働く31歳の成沢民子は、脳軟化症で回復の見込みのない夫・寛次に縛られた暮しを若さの空費と考えていた。彼女は赤坂のホテル支配人・小滝にそそのかされ夫を焼殺し、行方を絶つ。直感で民子を疑った刑事・久恒はその行方を追ううち、民子への欲望をつのらせ、政財界の黒幕・鬼頭の女になっていることを突き止める。人倫の道を踏み外したものがたどる〈けものみち〉とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
香取奈保佐
85
現実から逃れるために、女はけものみちを歩むことを選んだ。周囲には彼女を道具にしようと企む権力者たち、後ろには執拗に追ってくる刑事。ここまで脂ぎった世界を描くには、並々ならぬ筆力と構成力が必要だろう。どこに向かうとも知れず、けものみちは続く。誰も振り返らず、物語は進むべくして進んでいる。どんな結末を迎えるのか。深い山奥にあって、頼るべき道がそこしかない時のように、読者もまた引き込まれるようにけものみちを進んでいく。2015/08/31
NAO
75
脳軟化症の夫の縛られた状態にある割烹旅館の民子が、自由を求めてある賭けに出たところ、自由の身となって送り込まれた先が脳軟化症の政財界の黒幕の老人の屋敷だったとは何とも皮肉な話だ。それでも、自由になれた途端に奔放に、しつこく男を求めるあたりが、何ともすさまじい。しつこさでは、民子を追い続ける刑事久恒も負けてはおらず、清張の人物描写には凄味を感じる。2019/05/13
ともくん
58
いかにも、昭和な犯罪小説。 民子が、徐々に性悪になっていく様が読んでいて、ゾッとする。 まだ、物語の一部にしか光が当たっていない。 全体像が、どのようなとのなのか気になる。2021/03/16
金吾
50
○悪い人だらけです。民子もどんどん欲得の塊になっていってます。規模の小さな悪から規模の大きな悪、悪が重なりあっているように感じました。2022/05/20
ソーダポップ
50
上巻の冒頭で「カモシカやイノシシなどの通行で山中につけられた小径のことをいう。山を歩くものが道と錯覚することがある」と書かれている。主人公の成沢民子も、警視庁の久恒刑事も、政界の黒幕とされる鬼頭洪太、それを取り巻く様々な人物も、けものみちに踏み込んでいく。その道はもともと人間が歩む道ではなく、方角を誤り思わぬ山奥へ入ってしまう。人倫の道もこのけものみちと大差なく、動物のゆく道を人の道と錯覚し、どんどん悪の深間へ落ちこんでいく過程が上巻で生々しく描写されている。2022/03/12




