内容説明
あなたの周りにもきっといる――。小学校教員、新聞記者、地方小劇団の座長、看守。偏狭な社会でちっぽけな権力をふりまわす木っ端役人、目立たないくせにどこか鬱陶しい地味女、誠実に見えて肝心なところで無神経な好青年……。思惑と欲望がうずまく小市民たちの葛藤を、ユーモアと恐怖のなかに浮き彫りにした、名手による傑作短篇集。「華美粉飾」「合意情死」「自動幻画」「巡行線路」「有情答語」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
77
いや、これはきつい。目立たないくせにどこか鬱陶しい地味女、誠実に見えて肝心なところで無神経な好青年……。岡山を舞台にそこに生息する小市民を描いた短編集。人間が主題のホラーというと殺人鬼や狂人が活躍するものが多いが、ここで描かれているのはそこかしこで生活している普通の人々。だからこそ読んでいると自分の内面にある小市民性やせせこましさをこれでもかと覗き込まされるような感覚を覚える。さらに何が嫌かってその小市民の行動に反発しつつ納得させられる所がとても嫌。いつ我々が主人公になってもおかしくない話ばかりでした。2021/06/22
坂城 弥生
51
明治頃の男と女絡みの短編集。「自動幻影」が特に好きだった。2022/02/02
えっくん
37
★★★★☆小学校教員、新聞記者、地方小劇団の座長、看守などのどこか小心者で姑息な男たちが、艶めかしい女たちに翻弄される5編の短編集。近代日本の岡山を舞台にした作品ですが、まさに志麻子センセの「ぼっけえ、きょうてえ」に近い暗澹とした世界観で、登場人物たちが語る岡山弁にも何か古めかしさを感じさせます。表向きは平常心を装いながら心の中は欲望に満ち溢れていたり、嫉妬だらけの男心が一番のホラーかもしれません。淫猥なタッチの表現力は志麻子センセのすごさです。お気に入りは物騒なタイトル名がついている表題作「合意情死」。2020/03/25
メタボン
28
☆☆☆★ ホラー要素はないが、ある意味で女の情念が恐ろしい短編集。「有情答語いろよきへんじ」の囚人の女が凄い。2022/07/08
ちょん
21
岩井志麻子さんといい原田マハさんといい…岡山の女性作家さんたち色強すぎで大好き♥️短編集でしたが最後の「有情答語」(いろよきへんじ)が1番好きでした。岡山弁いいなぁ、使ってみたいなぁ✨2023/05/08