内容説明
諧謔性に富んだ反射神経、自負心の誇示、侮蔑への鮮やかな反撃……。一筋縄ではいかぬ誇り高き人々の不退転の反俗・反逆の精神を切れ味鋭い機智に乗せて演じきった舞台、それが『世説新語』の世界である。内乱、戦争、めまぐるしい王朝交替。暗く険悪な乱世を生き抜く魂は、悲哀、憂鬱を乗り越え、豪放洒脱な生き様は究極の言語表現を生み出した。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
21
『世説新語』を通して中国の機智表現を扱った初期(1984年)の著作。『世説新語』は魏晉南北朝の「乱世」を背景として生まれたもので、反骨精神に満ちた鋭さとユーモアを持つ。著者はこの「彼らの朗らかな自己肯定は……苦い絶望を味わい尽くせた果てに、湿った屈折や懐疑をふり切り、生きる根拠として再確認された」とする。また、乱世のレトリックは魯迅や毛沢東といった近代の乱世に生きた中国人の間にも引き継がれていく。同著者の『中国的レトリックの伝統』と合わせて読み直したい。 2022/04/18
bittersweet symphony
2
オリジナルは1983年中公新書で発売された井波律子(1944-)さんのデビュー作。「世説新語」は後漢末から隋による統一までの乱世期の人々の言行エピソード集。本書は儒教的倫理が戦乱の世界でその説得力を失う中で権力に対して戦わずして戦う手段としてのニヒリズムとそれを物質的に支える酒とドラッグ(五石散)、それらを表現するレトリックを解説するものです。2010/03/20
DEN2RO
2
5世紀中ごろ編纂された「世説新語」は後漢末から東晋末(2世紀末から5世紀はじめ)の時代に生きた人々の言葉と生きた方を生き生きと伝える古典です。その中に中国人の歴史を貫く精神のひとつとして、機智と反骨――権力に抗い、しかも挫けることなく生き抜く姿勢を探った本です。2010/02/20
bittersweet symphony
1
通読途中の「文選(詩編)」(まだ3巻目)の「世説新語」ネタの登場人物たちがなかなか楽しいので再読。中国史に通底するレトリック切り口にするなら著者もあとがきに書いている通り魯迅・毛沢東と「世説新語」の間を補完する必要がやはりありますね(本書を読後本棚に戻したら学術文庫の井波本がもう一冊あってそれが「中国的レトリックの伝統」でしたが、あまり記憶に残っておりません)。 2023/02/04
韓信
0
『世説新語』を中心として、中国人の会話における機知を分析する論考。六朝貴族の生存様式から説きおこし、清談や人物評における典故引用や比喩、比較、オノマトペなど具体的なテクニックを解説しており解りやすいが、改めて世説新語の内容を見ると、何を言うかよりもどう言うかというレトリックばかりが重視されており、四六駢儷体が発達して中身が空疎になった六朝文学と軌を一にしていると気づかされる。だからといって文学として貧しいわけでなく、ゴツゴツとした人柄を表すオノマトペが何種類もあるように、日本人とは異なる感性が垣間見える。2025/05/27
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