内容説明
真田昌幸・幸村のために関ヶ原の決戦に間に合えなかった徳川秀忠は、家康から痛烈な叱責をうける。家康は真田父子に切腹を申しつける決意でいたのだが、真田信幸の舅で徳川家譜代の重臣・本多忠勝の戦も辞さぬ助命嘆願に屈して紀州九度山に蟄居させることとなる。わずかの家来だけをつれて九度山に移った父子は「関ヶ原の戦い」が再びおとずれる日を夢みて孤立した日々をおくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
127
逼塞か雌伏か。紀州九度山における静謐の十年余。敗者である幸村、昌幸に与えられた死罪に代わる忍従の日々。世は動く、絶え間なく。幕府を開いた家康、将軍の座を秀忠に譲るも大御所として天下を睨む絶対的な勝者に。牙を抜いたか抜かれたか、ひれ伏す歴戦の武将ども。不屈の闘志で虎視眈々、暗躍するのは…やはり真田の草。この巻、影の主人公ともいえる草の者お江の水面下の躍動が抜群に面白い。企み謀り、京に紀州に東奔西走。音をもたてぬ甲賀忍びとの暗闘もスリリング。それも全ては幸村らの為。そして雄飛の兆し。関東と大坂、決裂か。2021/06/19
優希
112
関ヶ原のその後が語られていきます。信之と本多忠勝の計らいで命は助けられた昌幸と幸村ですが、紀州九度山へ流されることに。不穏な空気の中で、西軍の生き残りの者たちは豊臣政権復活を狙っているように見えました。世の中は不気味とも言える静かさが漂っているようにも感じます。そんな現状でも、戦が起きそうな緊迫感はありますね。自ら戦を起こすことを禁じられた昌幸ですが、家康を打ち取る野望を抱いているようです。再び関ヶ原が起きないかと夢見ながら過ごす日々の孤独は想像できません。2016/11/09
伊田林 浮刄
81
★★★☆☆すべては豊臣家の御為という清正・大いなる決意を胸に臥薪嘗胆の日々を送る昌幸と幸村・愛すべき草の者たちの決死の覚悟・お江の涙…残りの人生なんのために生きるか誰のために死ぬるか皆それぞれのレゾンデートルを持っていちにち一日を大切に過ごしている 次巻はいよいよ家康と秀頼の対面 とうとう豊臣家の終わりの始まり …そしてさらば昌幸2016/08/25
財布にジャック
80
関ヶ原の後、九度山に蟄居させられてしまう真田父子の切ない日々を読んでいて、なんだか寂しくなりました。でも信之と本多忠勝のおかげで殺されなかっただけマシなのかもしれないですね。この巻では、やたらと加藤清正が褒められてるんですけど、池波さん清正が好きなのかなぁ。勿論、しのび達も武将達の陰で、頑張っていました。しかし、関ヶ原直後なせいか今までになく地味な巻という印象でした。2011/01/17
タツ フカガワ
78
関ヶ原の戦い後、昌幸・幸村の真田父子は紀州九度山へ流される。家康が徳川政権の地固めを進めるなか、天下は落ち着いたかに見えたが、真田家の忍びたちの動きは活発になる。お江や佐助、弥五兵衛ら歴史の陰で蠢動する者たちが、おまさ、彦十、五郎蔵ら鬼平の密偵たちと重なる第8巻。彼らが織りなすドラマはホント面白い!2023/04/15