内容説明
「卑怯な騙し討ち」、米国では未だにこう呼ばれる真珠湾攻撃。開戦通告文を米国に提出するのが、攻撃開始から五十五分遅れたためである。これまで遅延の原因は、野村吉三郎大使をはじめ駐米日本大使館の怠慢とされてきた。しかし野村大使らの行動には多くの謎が残されていた。実は、日米開戦がなされたまさにその時、野村大使らはある陸軍大佐の葬儀場にいたのだ。――新庄健吉、謎を解く鍵は全てこの男の死にあった。
目次
第1章 ワシントンDCで行われたある日本人の葬儀(五十五分遅れた「対米覚書」;午前九時、日本大使館はその時― ほか)
第2章 なぜ葬儀は隠されたのか?(「若松会」は知っていた;「外務省を侮辱する言説」 ほか)
第3章 陸軍主計大佐・新庄健吉(若かりしエリート主計将校;国家経済をグランドデザインする ほか)
第4章 対米諜報に任ず(龍田丸に乗り合わせた三人;“要注意スパイ行為人物” ほか)
第5章 謎の死(ワシントン着任;迫り来る日米開戦 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新父帰る
8
本書の大部分は「数字のスパイ」陸軍主計大佐新庄健吉の生涯が綴られている。開戦通告の当日、1941年12月7日ワシントンDCの教会で新庄の葬儀が行われており、野村吉三郎、来栖三郎両大使も出席。式が長引き最後通牒の手交が遅れたというが、戦後外務省はこの事実(葬儀云々)を認めていない。彼は、あの秋丸陸軍主計中佐の先輩。対米諜報の任に着いた新庄は米国国力調査報告書を同年7月に完成。帰国予定の岩畔豪雄に手渡す。東条は夜討ち朝駆け論者で手交遅延との関係が取り沙汰されている。新庄44歳の客死がいっそう謎を深めている。2020/08/29
えぬ氏もわるよのぉ
5
昔読んだ本の再読。この本に書かれている開戦通告が遅れた真の理由というのは本当だろうかと思ってしまう。最後通牒手交の時間厳守は何にも優先する重大事項のはずなのに、こんなことで遅れてしまうのだろうかと。だがそれはそれとして、日本陸軍の主計将校の米国における情報分析活動の話は興味深かった。2021/01/13
湘南☆浪漫【Rain Maker】
0
東条英機は宣戦布告なしの奇襲を考えていたけども昭和天皇に止められていた。 けど、その裏で駐米日本大使館の関係者が葬儀に出席して不在。 敢えて連絡不能の状況下を作ったうえで開戦されたのだとしたら…。 色々と闇がありそう。2018/09/06