内容説明
美貌と歌才に恵まれ権門の夫をもちながら、自らを蜻蛉のように儚いと嘆く作者二一年間の日記。母の死、鳴滝籠り、夫との実質的離婚――。平易な注釈と現代語訳の決定版。I(上・中巻)、II(下巻)収載。
目次
蜻蛉日記・上(序文 兼家の求婚 頻繁に来る兼家の文 文通 ほか)
蜻蛉日記・中(三十日三十夜 下衆の争いと転居 三月の節句―桃の花 小弓の賭物 ほか)
本文校訂表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロミ
10
訳文のみ読了。藤原兼家の妻のひとり、道綱母の愚痴日記文学(?)。道綱母の嫉妬は確かに怖くて、夫の愛人の子供が死んでよろこぶとかヒエ〜ってなりますが、正妻時姫からすればあなたも愛人だよっていうか。道綱母のネチネチしたところばかりがピックアップされがちですが、個人的には季節の移り変わりの描写や歳時記的な儀式の描写など、ゆったり時が流れている空気感を味わえたのが意外でとても良かったです。兼家と道綱母の間でオロオロする道綱が気の毒すぎる。2015/03/15
ミヤト
7
ほぼ日本語訳だけを読んだ。浮気男に苦しめられる作者の思いがつらつらと書き連ねられている。和歌がどれもかなり秀逸で相当教養があったのだとうかがえる。みみらくの島をはじめとした有名なシーンが多かった。上巻のほうが面白みがあったので下巻を読むか悩ましい。紫式部日記をはじめいくつか日記を読んだがこれもなかなかよかった。あんな夫でもなんだかんだ思っている作者はなかなかのもの。いつかは原文でチャレンジしたい。2022/07/04
けろ
4
当時の貴族社会の夫婦・男女関係を女性側は納得しているにもかかわらず、やはりかなり苦しんでいたのだというのがよくわかる日記。道綱や自分に関わる祝い事など華やかに行われただろうに、そういうことは書かずに、通ってこない兼家のことを延々愚痴る。美人の道綱母はプライドが邪魔をして、精神が満たされず幸福になれないのだ。人の心は昔も今も変わらないのだと感じさせる。2019/05/18
fukurou3
3
「夫は私のことなんか少しも大切にしてくれない、私は蜻蛉のようにはかないのだわ」と本人は書いているものの、中身を読んでみると藤原兼家さん、かなり気を使っているのがわかります。これだけしているのに奥さんにわかってもらえないなんて兼家さんの方が蜻蛉のようです。摂政だけど。こういう人、現代でもいそうです。全体としてセレブマダムの「私の生活はこんなにすごいのよ」ブログでした。こういう作品が千年前に作られたところが、日本の古典のすごいところです。
真琴
1
(下巻へ)2024/04/16