内容説明
「何か困ったことでもあったらいつでも私の屋敷に来るがいいよ」希代の天才陰陽師・安倍晴明の言葉は、優しいものだった__。時代(とき)は平安。愛し抜いた女を喰らい、鬼となった大江山の酒呑童子は、自らが年をとらず、若いままでいることに苦しんでいた。そんな時、逢魔が辻で晴明と出会ったのだ。不老不死となった鬼が、いかにして生きる術を得たか。安倍晴明との運命的な出会いを描く「鳴弦の月」と、同じく平安時代末期に材をとった「影喰らい」、明治時代の鬼二人を描いた「幻戯師(めくらましし)」の三本を収録。新編集による封殺鬼選集第ニ弾!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
5
聖が鬼になったきっかけや仲間と違うことにうすうす、気づきながら否定していらだつ姿に彼の孤独を思い、また、自分の立場のための人々から疎外される孤独な陰陽師のことも思いを馳せ、切なくなりました。日本史で出てきた人々の名前や事件も絡んでいて読んでいて楽しかったです。最後の物語は「妖怪は神経が見せたまやかし」という考えが流布していた明治時代でひっそりと、しかし、人知れず、活発に活躍している妖怪たちの姿に和みました。2010/03/16
海星梨
2
平安前期から後期、とんで明治の世。最後の小編が好きです。明治四年まで、とありますが暦の編纂などで土御門家は公職があったんですよね……土御門家強いですね……。史実を踏まえてそのなかで鬼二人が生きていく様を描き出すこのシリーズ素晴らしいです。2019/01/12
まるてぃん
2
再読。平安時代前期・後期、そして明治時代と、それぞれの時代の雰囲気を感じられてレトロな気分に浸れた。人間と闇の世界との関わり方も、各々の時代によって変化している様子が興味深かった。平安時代、人間社会にはこんなふうに怨霊や呪詛、異形の存在が、当たり前のように私たちの傍らに存在していたのだろうか。文明開化後の明治時代、非科学的なことを否定して、闇の世界の住人を忘れさってしまった人間達の姿は、なんだか哀しく寂しいものがあった。でも、そんな人間達をしりめに、たくましく生きていく妖達の姿は頼もしかった。2011/11/21
めぐみこ
1
年をとらなくなってしまった鬼同丸の焦燥、変えられない未来を見てしまう泰親の無力感、移りゆく時代への鬼二人の寂寥感…どれも切なくて胸にずしっときた。高尾一座は今もどこかで興行続けてるのだろうか。2011/02/26
愁星
0
1000年ほど前の出来事を書くなら、”公卿クラス”とか”タイミング”とか”エスカレート”なんて表現は使わんといて欲しいわ。2011/02/08