内容説明
「月光の東まで追いかけて」。出張先のカラチで自殺を遂げた友人の妻の来訪を機に、男の脳裏に、謎の言葉を残して消えた初恋の女性の記憶が甦る。その名前は塔屋米花。彼女の足跡を辿り始めた男が見たのは、凛冽な一人の女性の半生と、彼女を愛した幾人もの男たちの姿だった。美貌を武器に、極貧と疎外からの脱出を図った女を通し、人間の哀しさ、そして強さを描く傑作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
88
久しぶりの宮本照作品。再読かどうか不明(苦笑)。似たストーリーは読んだような気がするんだけど。結論:長かった。この3分の2くらいの長さだったらもっとシャキッとした作品になったのでは。美貌の「よねか」は最後までミステリアス(褒めてない)だったし、自殺した加古の心情も闇の中。頻繁に出てきたカラチはカラチである必要はあったのか?喪失と再生の物語、というわけでもなさそう。精神科医の安倍先生が救い。「生きるということは、自分を肯定するところから始まる」こんな先生に会ってみたいな。2015/04/10
巨峰
51
パキスタンのカラチで自殺した夫。その死の数日前に夫は妻の知らない女:塔屋米花と同地で逢っていた。夫の死はその女のせいなのか。妻とその子供は、精神的にも追い込められる。生きるための知ること。そこからこの物語がはじまる。夫とその米花の同級生、杉井が独自に米花の足跡を追う。徐々に立ち直る妻とその子供たち、見えてくる米花の人物像。でも全てがわかるわけじゃない。杉井という人はちょっとありえないかな。48歳の家族もあり社会的にも成功した男が13歳の頃の惹かれあった女子同級生の姿を追って何度も旅行するってのは・・・2015/07/02
B-Beat
48
★今年の積読本消化第1号。ある企業戦士が異国の地で自殺する。その現場に刻まれた痕跡に絡む謎の女性を巡って旧友とそして残された妻が後を追う。旧友の語り口は丁寧な独白形式。妻のそれは日記形式。謎の女性は才媛かつ並はずれた美貌の主ながらその過去は薄倖で…なにやら東野作品「白夜行」や「幻夜」の女主人公が彷彿される。これは宮本さんが試みたミステリーかと読み進めると…。丹念に描かれていた女性の運命に何を想うか、冒頭の謎解きにスリルを求めるか。そこらあたりの読者の傾向で読後の納得感、満足感は違ってくるな、そんな読後感。2015/01/08
エドワード
33
<月光の東>という言葉は何を意味するのか。13歳の時「私を追いかけて!」と同級生を誘い、18歳の時、女友達に「彼と私は男と女よ」と言い放った女性、塔屋米花。米花の消息を追う二人。大手商社社員の杉井淳造。夫に自殺された加古美須寿。美須寿の夫と淳造は米花の中学の同級生だった。信濃大町から始まる旅は、糸魚川、北海道、京都、カラチ、古代の月氏国へと続く。証言者たちは曲者ぞろい。果たして米花は聖女かファムファタルか?ミステリアスな道行を競馬や骨董が彩り、大人の恋ごころがキラリと光る。この雰囲気が宮本輝さんだね。2015/04/22
カ
32
登場人物が多く交錯するが、基本宮本輝が好きだからついていける。まぁ、女性関係のお話は好きだし、因果な謎の部分もほど良くいいが読了後はやや暗くなる。勉強になります。2014/11/27