内容説明
天明の大飢饉に見舞われた奥州八戸藩での凄惨な人肉食を鉄砲隊足軽小十郎の日録を追いながら苛烈に描写。飢饉による死者たちの嘆き、生に執着する人々の業を直視し、人間存在の根本に迫る代表作「おろおろ草紙」。ほかに、「暁闇の海」「北の砦」「海村異聞」の歴史小説3篇を収録。著者の郷里に材を得、庶民の強靱な生きざまを鮮やかに描いた傑作小説集。
感想・レビュー
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YO)))
10
表題作は天明の大飢饉に於ける奥州八戸藩の惨状,取り分け「共食い」の悲惨をテーマとしたもの.武田泰淳『ひかりごけ』のように一つの事件を通して個人の内面に入り込んでいくのではなく,藩士の日録の体裁のもと,飢餓下に於ける不可避的な行動の例証として幾つもの共食いの事例が描かれている.作者による後書きには,自らの家族の生に対する執着の希薄さへの反撥もあって,何をしてでも生き抜こうとする人たちにこそ自分は荷担したい,というようなことが書かれてあり,描写の苛烈を尽くして尚そう言い切るところに,作者の覚悟を見る気がした.2014/01/10
sashawakakasu
8
遥か昔のの飢饉の苦しみをまざまざと見せつけられ、生き残った先祖に感謝しなければと思った。おろおろ草紙、海村異聞がとてもおもしろかった。2021/06/29
鵺
2
人肉レシピ2023/11/19
Narumi
1
天明の大飢饉の話を含む中編集。食べ物があるというのはなんとありがたいことか。2015/07/04
一星結輝
1
題名とは裏腹におぞましい。生への執念はおぞましい。2010/01/15