内容説明
「こんなに切ったのに何で死ねないんですか……」「何で血が止まっちゃうんですか?」自分の手首を、もう少しで切断するくらい切り裂いた男性が、治療にあたった医師たちに言った言葉だ。救命救急医療センターで、自殺を図って死ねなかった未遂者たちに取材した異色のルポルタージュ。なぜ人は自殺を企てるのか、なぜその方法を選んだのか、本当に死ぬつもりだったのか、自殺する瞬間は怖いと思うのか……。自殺未遂者の肉声を基にその心理を解きあかす!
目次
第1章 「1000ml以上の出血の跡あり」
第2章 「ネズミ殺し」を飲みました
第3章 うつ病と神経症
第4章 血に染まった白い服
第5章 死を望んだ心理
第6章 故意か、偶然か
第7章 拒食と過食の病棟
第8章 「生きててよかった」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
出世八五郎
4
自殺する人間は意志が弱いのじゃないということを知った。驚愕した。死にたいと言い実行するものは死にたい病にかかっている。どんなに自分は平気!と思っている人間でも自殺する可能性があることに驚愕。この点を踏まえて、対応策を考えて欲しい。誰もがその可能性がある。
ケンサク
2
物凄く当たり前の話だけれど、自殺する人も普通の人間だ。今日まで普通だった人が、明日急におかしくなって自殺をするわけでない。時間をかけて、少しずつ、だけれども着実に心は蝕まれ、いつしか自殺という最終結論を出してしまう。良くも悪くも、人間の心の複雑さ、難しさ、そして同時に存在する素晴らしさを感じられる本でだった。自殺者3万人が何年も続いていて、ということは自殺未遂はその10倍以上いると考えられる今の時代。どんな大事件や大事故、天災と比べても桁違いの悲劇について、もっとしっかり考えていかなければならないと思う。2012/01/11
kishi
2
重い本だった。飛び降りてる時に何を考えたのかとか、興味はあるけど、実際当事者に聞くとなると躊躇するようなことをズバリ聞いて纏めている。文庫本だけど中身は重い1冊。2010/02/14
Ms.H
2
80年代の自殺と現代の自殺では、悲壮感や絶望感・切迫感がちがうような気がします。「強いられる死」を読んだ後なので、よけいそのように感じられました。2010/01/28
うたまる
1
「鬱病はあらゆる年齢、人種、信条、階級の人々を無差別に襲う」(スタイロン)……自殺から生き残った人たちを取材したルポルタージュ。バブル崩壊後に三万人を超え一気に社会問題化した自殺問題だが、本書はその前夜という感じで暗中模索ぶりを眺めることになる。まだ鬱病にスポットが十分当たっていなかったり母性性欠如が犯人扱いされたり、誤解させるような記述も多い。そんな中、貴重な体験談を引き出せたのは著者の真摯な姿勢。取材にあたり「この人とは、いつまでも知り合いでいよう」と腹を括るという。久しぶりにメディアの誠実さを見た。2024/08/11
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