ちくま文庫<br> 貧乏サヴァラン

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ちくま文庫
貧乏サヴァラン

  • ISBN:9784480033659

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内容説明

家事がまるきりダメな茉莉のたった一つの例外が料理。父森鴎外が留学先で覚えたドイツの下宿屋料理と生まれ育った東京の家庭料理を出自に、ブリア・サヴァランばりに食べ続ける。オムレット、ボルドオ風茸料理、白魚、独活、柱の清汁……。得意料理をとくとくと語る食いしん坊エッセイにして、精神の貴族の貴重さを述べ贅沢を愛する心を説いてやまぬ芸術談義という自在さ。江戸っ子らしい口とパリジェンヌの舌に奏でられ、どのページからも芳醇な香りがたちのぼるマリア流『美味礼賛』。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

青蓮

96
美味いものには辛さもある、苦味もある。生きている歓びや空気の香い、歓びの味、それがわからなくてなんの享楽だーー食にまつわる話を中心にまとめたエッセイ。文章のリズムが独特なので慣れるまで読みづらかったけれど、なんとか読み切りました。茉莉さんは家事はまるきり駄目だったようですが、料理の腕前はなかなかのものだったらしい。本書に登場する料理は今では特別珍しいものではないけれど、当時は目新しくオシャレなものだったようで、読んでいると何か特別な料理に思えてくるから不思議。本当の贅沢を知っていた茉莉さんの感性が光る1冊2016/07/19

ユメ

48
エッセイを読むと、森茉莉はしばしば腹を立てている。その怒りは、たとえ暮らしぶりが貧しくとも贅沢を愛する己のうるさい舌を満足させるのに猛烈な努力が要ることに端を発しているというのだから、筋金入りの食いしん坊だ。その食いしん坊が、確固たる審美眼をもって書く食べ物についての文章に、恍惚とせずにはいられない。冷紅茶、牛酪、シュウクリイム、オムレット、チョコレエト…これらの表記が現代の仮名遣いより麗しく、より美味しそうに感じられるのは、本物の贅沢を知る人が多かった古き世を懐かしむ茉莉の心持ちが移ったのであろうか。2017/09/21

けぴ

47
森鴎外の娘である作者の食に関するエッセイをまとめた一冊。食いしん坊であるほか、お酒に弱いのに好きなところが微笑ましい。2024/06/01

mahiro

36
サヴァランはお菓子でなく有名な美食家の名からだった。お嬢様育ちで家事能力ほぼ0料理だけは情熱を注ぐ作者の美意識満載のエッセイ。森真莉さんの作品は『枯葉の寝床』しか読んだ事のない私だが、読みながら同じ東京出身の杉浦日向子さんの食エッセイと対比していた。シャンとして粋な杉浦さんの文と比べ森真莉さんは例え手元不如意の生活でもどこか浮世離れした自分だけの世界に浸っている耽美な雰囲気がある、カルケット懐かしい昭和レトロ、本当の贅沢は高価な品物を持っている事ではなく贅沢な精神を持っている事だという言葉が心に沁みた。2022/08/09

36
面白かったです。本物のお嬢様で、食いしん坊な茉莉さん、自分の好きなものがはっきりしていて、すぐぐらぐらしてしまうわたしは彼女がとても羨ましいです。料理は得意だという茉莉さんの食べ物の描写が美味しそうで…白身魚と野菜のサラダは他のエッセイでも度々でてくるのですが、一番気になる料理です。贅沢って気持ちの持ち様なのですね。料理も、お菓子も、お酒もうっとりでした。2017/09/06

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