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内容説明
一○年にわたるトロイア戦争が終結.オデュッセウスは,帰国の途中嵐に襲われ,さらに一○年の漂流冒険ののち,神々の援けを得て二○年ぶりに帰還,留守の間妻を苦しめていた悪逆な求婚者たちを討ち亡ぼす.『イリアス』とともにヨーロッパ文学の源泉と仰がれる,劇的な盛り上りに満ちた大英雄叙事詩.新たな訳者による新版.
目次
目 次
凡 例
第十三歌
第十四歌
第十五歌
第十六歌
第十七歌
第十八歌
第十九歌
第二十歌
第二十一歌
第二十二歌
第二十三歌
第二十四歌
人名・地名索引
訳 注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
159
妻への求婚者や裏切り者への復讐は、智に優れたオデュッセウスらしい計画だ。『イリアス』に登場する数ある勇将の中からなぜ彼を選んだのかと思われるほど、その態度や発言にイヤらしさを感じていたので、10年もの漂流やその間の辛酸な経験は罰だと思ったが、最終的に神は彼の味方になっている。彼の息子や妻、老いた父、彼を待ちわびた豚飼いなどの方が、損得勘定がなくて彼よりよほど立派に想えるが、神は彼に苦難を与えても見捨てはしなかった。過去に剣を持って戦った男の1つ1つの冒険エピソード、また敵を討つ物語としては本当に面白い 2017/09/12
のっち♬
146
帰国して息子と合流したオデュッセウスは妻の元に居座る驕慢な求婚者たちの粛清に乗り出す。頼りなかった息子もいつの間にか逞しくなっている。1対100以上だろうが攻撃を弾くアテネの加担にオデュッセウスの力量が加われば勝負はあったようなものだが、それまでに乞食に変装して一人一人性根を調査する過程があるから盛り上がる。求婚者絡みだと見境なく殺したり、語りに信を置けなくなったりと、冷静とは言えない人間臭さがまた印象的。妻に正体がバレるのを最後まで焦らす点といい、エンターテイメントの肝は意外なほど現代と変わっていない。2022/08/11
藤月はな(灯れ松明の火)
85
下巻は故郷、イタケにやっと、着いたオデュッセイアと母の傍若無人な婚約者によって辛酸を舐めさせられてきた息子、テレマコスによる復讐劇。しかし、復讐を企てるオデュッセイアよりも、婚約者達の増長とそれによる領地と人心の荒廃を嘆きながらも貧富関係なく、お客さんをもてなす豚飼いのエウマイオスと主人がすぐに分かって亡くなった飼い犬の心の方が余程、高貴だと思う。そしてAlcon Entertainmentのロゴの元ネタとなる「12の斧の穴を射通す」話も登場しています。2017/10/27
ずっきん
74
下巻は冒険ファンタジーから一転、故郷の屋敷に居座り妻と財産を狙う求婚者達への報復戦となる。むー、とにかくカッコいい。武だけではなく知略にも秀でたヒーローここに誕生。いやー、ホメロスさんたらオデュッセウス大好きだよね。でもさ、ピロクテテス置き去りにしたし、アイアスを口八丁で破滅させたりもしてるじゃん?と思ってたら、叙事詩環は『イリアス』と『オデュッセイア』より後に創作されたらしい。なるほど、ホメロスの二作から伏線を引っ張ってるんだな。好みは圧倒的に情念と比喩まみれの『イリアス』だけど、すごく楽しかった。2022/06/21
NAO
70
故国イタケに戻ったオデュッセウスと息子との親子の対面、古くからの王夫妻に仕える老女がオデュッセウスを見抜く場面は、格調高く美しい。最後の復讐の算段をするオデュッセウスの冷静さ、巧妙さ。最終的な殺戮まで徐々に増していく緊迫感。上巻が、神が多く出てきたり、不思議な島を巡るなど神話的要素が多かったのに対して、この巻はオデュッセウスの人間的な復讐劇となっている。そういった面でも、『イリヤス』より読み易い。神話的で格調高い『イリアス』と、人間的な『オデュッセイア』。好みは分かれると思うが私は『イリアス』の方が好き。2017/03/06