内容説明
「お便り拝見いたしました。わたくしは全身から血が流れるような衝撃を受けました。榎本さんの本当のお姿が浮かんで参りました。イエス・キリストの十字架のあとに、真剣に従きしたがって行こうとするお姿です。」婚約者の野村和子からの手紙である。京都世光教会を設立し、今治教会を経て、アシュラム運動の発展に尽くした榎本保郎の52年を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
31
「ちいろば」とは主(キリスト?)に必要と言われれば、たとえその力がない小さなロバでも、素直にその用につくロバを称するらしい。主人公の榎本保朗牧師の生涯は、その教えを見事に貫徹。体調の悪化で周りの人々が止めたにも拘らず布教の旅路で逝ってしまった。若い頃、親しくしていただいた仏教者に「自己限定をせず、頼まれた仕事は断るな」とアドバイスをいただき、随分と違う景色を見れた記憶がある。榎本師の姿勢はレベル差は各段だがそれに近い教えもしれない。宗教とは何か、その視点の入門書として最適ベストな一冊だと思う。2023/07/24
ほうき星
15
再読本。といっても遥か昔の事だ。榎本保郎牧師の52年その激動の生涯を綴った作品である。信じるままに。容易いことではない。強い意志がなければできない。熱く篤く人生を駆け抜けた。私の人生はどうだろう、大丈夫か。悔いなく生きたいと思った。2016/10/05
Ayakankoku
12
小さな頃通っていた教会の子ども用の礼拝の名前が「ちいろば教室」だったので、ずっと気になっていた「ちいろば先生物語」。神様を信じて、歩む榎本牧師。どんなことも信仰があればなんとかなると歩む力強さに感服。そして牧師夫人として夫を支え続ける奥さん、素晴らしいなの一言に尽きる。2022/01/15
あかつや
7
何も持たない学生の身でありながら世光教会を立ち上げた保郎。神さまがなんとかしてくださるだろうの精神で困難を乗り越えていく。結局最後まで読んでもこの人のこと好きにはなれなかったなあ。こいつ嫌いだわって場面がたくさんあった。でも周囲の人達の反応を見るに、実際に接したらたらしこまれるんだろうなあ。きっとこの人は伝道特化型人間だったんだろう。上巻に出てきた高崎倫常さん流に言うなら、伝道という本来の使命を徹底的に果たした人物ってことになるか。伝道のために自分が育てた教会を去っていく所なんかは偉いなあって思ったよ。2022/07/27
ほん(ぷちわら)
6
伝記なのに小説のように面白い!解説者は作者について「実在の人物の生涯を物語の形で描く手法のあざやかさという点で、この作家の力量は非凡である。」といっているけど全く同感。また他の作品も含めた三浦綾子の伝記作品についても『そこに描き出された一キリスト者の人間像が、信仰の有無にかかわらず、「よりよく生きたい」とねがう多くの人たちの願望を吸い上げる媒体になっている』といっている。私もこの作品について全く同じ感想を持った。解説も含めてとても読み応えがあった。「文学」に触れた感じ(゜-゜)笑2013/09/19