内容説明
下ッ引きの惣吉が考えた新商売は、正月飾りや供物を集めて焼却する“お送り屋”だったが……「くくり猿」。ゴミ取り人足、佐吾平に儲け話が舞い込んだが、その瓜の摘み取りにはどうも妙なことが……「瓜長者の野望」。医者のぐうたら息子・小金吾は町の発明家、この度ひらめいたのは生ゴミを利用して高価な初物の促成栽培、当たれば大儲けのはずが……「ひらめき息子」。大量のゴミ処理は江戸でも万人共通の悩み。今も昔も変わらぬゴミの問題をユーモラスに描く歴史短篇七篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
155
ゴミ問題の視点から江戸の暮らしを描いた短編集。たまたま拾った十二両の隠し場所に困ったお光、ようやくここならと安心したのに帰ってみたら大惨事。こっちもハラハラ。でも丸く収まって何より。口が奢った江戸の人たちの初物好きに目をつけた小金吾、ゴミを利用して野菜の促成栽培に成功するも御公儀から贅沢禁止令が出されてしまって…。今も昔もゴミ問題は変わらないですね。ユーモアを交えて書かれてるので読みやすかったです。2021/03/13
shizuka
57
江戸はリサイクルで成り立っていたと聞いていたけれど、やはりあったんだな、ゴミ問題。ちょっと使ってはポイ!をするがために、100万人都市の江戸のゴミは尋常ではなかったらしい。それをとにかくゴミ人足が集めて、船で運んで埋め立て地にどんどん投げ込んでいたらしい。でもゴミが増えるスピートが尋常でなく四苦八苦。ゴミ問題を中心に、江戸の人間のやりとりも面白おかしく書いている滑稽本。なかなか「臭い」話も多く、顔をしかめながら読むことも多かった。人間がいる限りゴミは生まれ続けるものな。臭い物に蓋の前にしっかり考えないと。2017/01/10
ほんわか・かめ
19
世界一の人口密度を誇った江戸。成長を続ける江戸の町からは、毎日おびただしい量のゴミが排出され続ける。そんなゴミにまつわる悲喜交交を、軽快な江戸っ子口調で見せてくれる短編集。季節の風習ごとに出るゴミ、頻繁に起こる火事による瓦礫。それにしてもゴミで一儲けしようと企む者が多かったなぁ。泰平の世にあって武具も不必要となってゴミとして出されていたり、人骨(切断された遺体)なども出てきたり。当時の埋立地を発掘したらトンデモナイお宝が出てきそうだ。2023/02/16
kick
1
当時、世界最大の人口を誇った、100万都市・江戸。そこで出されるゴミを切り口とした、ユニークな話。これが面白い! 時々、現代の言葉も交えて書かれていて、やはり読みやすく、すらすらと読了。ちょっとコメディタッチで、気軽に読めた。でも、このゴミ問題、現代でも深刻な問題だねね。2023/06/14