内容説明
「松本先生どうしてここへ?」「陸さんこそ、なぜ」実の妹の臨終を看取り、悲嘆にくれる一心の前に、東洋製鉄の松本耕次が現れた。松本は、娘の消息がわかって駆けつけたのだった。あまりに唐突な父子の再会に動揺し、わが眼を疑う二人。一方で、宝華製鉄建設は大詰めをむかえ、日本側は中国首脳に翻弄されていた。その中で頭角を現す一心に、更なる悪意が襲いかかる…。戦争孤児・陸一心の苦難に満ちた旅路、最後に選ぶのは祖国日本か中国か。血と汗と涙の傑作巨篇、完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
117
丹青の告発により冤罪が解けた主人公はプロジェクトに復帰し、7年がかりで完成した製鉄所の高炉に火が入る。妻に行状を密告される長幸、至る所で盗聴を考慮した上で会話しなければならない政治家たち、4巻は監視社会の怖さが際立っている。本作は日中双方から棄てられた主人公を通して、恐怖や憎しみといった負の感情をひたすら増大させる人間の悲しい本質と、甦らない過去に囚われずにそれを乗り越えて生きることの美しさを描いたとも言えるだろう。「私はこの大地の子です」—彼にとって魂が触れ合った地で誕生した人間の絆は何物にも替え難い。2018/05/12
zero1
96
日中の協力による製鉄所の建設は予定より遅れていたが、どうなる?そして一心は日中どちらの国で暮らすのか?元恋人の決断が泣ける。山崎は亡くなっても作品は残る。戦争の悲劇を忘れてはならない。2019/07/12
ジェンダー
84
全部を読み終わると中国を舞台にして書く作品でものすごい苦労したのが読んでいて伝わってきました。もちろん書かれている事が全て本当だとは思わないが、中国を知るには十分だと思います。2013/05/02
Rin
75
[借本]面白かったし読めてよかったと思える物語。家族とは血の繋がりだけではなく、かといって共に過ごした時間だけというものではないのだろう。日本の父も中国の父もまぎれもなく一心の家族なのだから。中国で生きること、日本で生きること。どちらで生きれば幸せといえるものではないだろう。どちらで生きてもきっと苦しめられたり差別を受けたりと苦難はあるはずである。一心たち残留孤児は国に何処までも翻弄されて虐げられてきた。だからこそ、自分を「大地の子」といい、中国で生き抜いていこうと決意した彼らの幸せを願いたくなりました。2019/04/09
HIRO1970
71
⭐️⭐️⭐️大学生時代によみました。2005/01/01