内容説明
養父と友人たちの尽力により、労働改造所から釈放された陸一心は、恩人である江月梅と結婚。そのかたわらで、中国と日本共同のプロジェクト「宝華製鉄」建設チームに抜擢された。一方、プロジェクトに協力することになった日本の「東洋製鉄」からは、松本耕次が上海事務所長として派遣される。松本は戦前、開拓団の一員として満州にわたった。しかし敗戦時妻子の生死も不明となり、傷心のまま仕事に生きてきた。戦後三十年を経て、両国で残留孤児探しが始まる──。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
110
苦難を経て日中共同プロジェクトの建設チームに加えられた主人公。一方、日本からは実父が上海事務所長として派遣される。更には日本人という理由で主人公から離れたかつての恋人と再会というドラマティックな展開や日中の価値観を浮き彫りにする交渉模様など、2巻になってようやく従来の著者らしい物語になってきたように思う。中国人が見せる狡猾さからも共産主義の闇ともいうべき激しい格差が垣間見れるし、その強者と弱者からなる社会区分は宿命的に1巻冒頭の吊し上げにも結びつく。日本軍の蛮行の様子には著者の怒りが存分に込められている。2018/05/10
zero1
82
日中合作ドラマでは削除された政治面が描かれる第二巻。労働改造所に入れられた陸一心。養父による命がけの訴えは涙、涙。書きたいことは山ほどあるが、読んだ記録。2019/07/12
Rin
75
[借本]助かってほしい、読みながら祈りたくなる。それほどに追い詰められていく一心の環境。なんとしてでも息子を救いたいと、凄まじいほどの気迫で行動を起こす陸徳志。どんな状況であっても信じることのできる相手がいることの素晴らしさ。奇跡のような人と人との繋がりがそこにはあった。新たな環境に身を置くことになった一心だけれども、日本の血にはきっとこれからも苦しめ、迷わされていくはず。中国と日本、どちらの国にも苦しめられる一心。そして、日本国と中国の関係の変化。まだまだ激動の予感がするので、すぐに次に入ります。2019/03/24
青色夜ふかし
72
「大地の子だけは私は命を懸けて書いてまいりました」徹底した取材に基づいた歴史の教科書。 様々なテーマが重層的に描かれる。 ①戦争を背景とした中国の反日感情「小日本鬼子シャオリーベンクイツ」 ②文化大革命、労働改造所と呼ばれる収容所での悲惨な状況。毛沢東が進め中国社会が混乱した。2018/07/23
カレイ.シュウ
66
文革の迫害をなんとか生き延びた一心は、日中共同の巨大製鉄所建設に関わっていく。話の大半は中国の国家権力闘争と鉄鋼事情に費やされます。政治経済小説の様相が強まって来ましたが、日本人の実父との関係も今後どうなるのか?次巻へ。2020/04/22