内容説明
同門の神子上典膳と対峙する小野善鬼の背中に、殺気の籠った気合が投げかけられた。老師・伊東一刀斎の裏切りだった。典膳を一刀のもとに斬り下げた善鬼は、一刀斎に切っ先を向けた…。のちの将軍家指南役・小野次郎右衛門の孤独な剣の道。
感想・レビュー
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夜間飛行
2
一刀斎から「剣は斬り覚えよ」とだけ教えられた善鬼は、五年間に250人斬って戻ってくる。その間は無我夢中で何も考えなかっただろう。けれども老齢の師と立ち合って以来、いつか自分も衰えるという考えに取り憑かれてしまう。徳川家へ仕官すれば師のように惨めな晩年を迎えずにすむが、それでは明らかに衰えるだけだ。善鬼は再び旅に出る。「斬り覚えよ」という師の言葉を胸に、さらに200人斬るための旅である。京の道場で卑怯者を斬りまくる善鬼の姿は、凄惨だがどこか清々しさがある。人が生きていく中で狂うことも自然な姿なのだと思った。2013/01/18