内容説明
様々な素材と趣向とテクニック。著者の才華がほとばしる短編の数々。――柳生流は無刀を兵法の極意とする治国の剣。しかし宗家但馬守は、大目付の職権をもって諸大名を糾弾し、彼らの怨嗟を一身に浴びていた。剣聖の公私にわたる波瀾の心中を描く表題作「柳生月影抄」のほか「下頭橋由来」「脚」「べんがら炬燵」「大谷刑部」「鬼」「春の雁」「旗岡巡査」「茶漬三略」の8編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
綾
2
青空文庫の「鬼」という短編のみ読了。「わしは君侯と領民のあいだに在って、自分のする事の為にしているだけだ。津軽家の為とも考えていない。百姓達の為ともべつに考えていない。――しかしわし自身の為にでない事だけは天地に云い得るのだ」かっこいいです。何かを為すにはこれくらい本気でやらなければならない、と思わせられました。2017/01/01
やすすけ
1
短編にして、柳生の来し方行く末をきれいに描いた作品。柳生が徳川の剣となったが故の苦難の一面をさらりとした筆致で書いた。2016/02/17
xavi
1
再読2015/12/29
すらっぱ
1
吉川英治の短編はスゴい。各編たった50ページほどなのに、恐ろしく心にへばりついてくる。今のところのベストは、江戸時代に青森県で行われた新田開拓の話。鬼と呼ばれた開拓奉行が居て、あらゆる人から憎まれながらも工事を断行、どうにか成功! 新田のおかげで飢えから救われた領民が、「奉行様のことを口さがなく言って申し訳ない。あの方は神様じゃ!これからは崇め奉ろう」と、奉行の屋敷に行ったら、奉行は「いままで皆に厳しい労働を強いてすまなかった」と書置きを残して切腹済。ぶ、奉行さまがああああ! ふつーに電車のなかで泣いた。2014/06/24