内容説明
M農地開発公社嘱託として満州に赴いた木川正介。喘息と神経痛をかかえ、戦争末期の酷寒の中で、友情と酒を味方に人生の闘いをはじめる。庶民生活の中の「小さくて大きな真実」。“日本の親爺”木山捷平が、暖かく、飄逸味溢れる絶妙の語りくちで、満洲での体験を私小説世界に結晶させた。芸術選奨受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
111
第二次世界大戦末期に満州に出かけた木川正介が経験する苦難を描く小説。木川は作者の木山捷平のことで、木山の実際の体験が反映されているのだろう。飄々したユーモアが全編に漂っており、悲壮感はあまり感じなかった。とは言っても、そのユーモアは辛い現実を包み込むもので、作者の人間的な温かさから来るのではないかと思う。美文からほど遠い淡々とした散文なのだが、うらぶれた詩情を感じる。ソ連が日本に開戦した時に満州に取り残された時の怒りと悲しみを書いた三章の「白兎」には、庶民の目から見た戦争の不条理が鮮やかに描かれているた。2016/07/09
ただいま蔵書整理中の18歳女子大生そっくりおじさん・寺
83
また読んだ木山捷平。この本はそれまで賞に無縁な木山捷平が、芸術選奨を受賞した作品である。長編小説という事だが、戦後に書いた短編を繋いで長編にしたもので、正直、あまり上手く繋いでいるとは思えない(クライマックスの所で懐旧譚になる)。他の小説よりもちょっと毒舌でもある。もちろんつまらなくは無いが、同じ長編なら『長春五馬路』の方が良いとは思う。しかしこの本で芸術選奨受賞してから、雌伏33年の木山捷平は57歳からブレイクする。人間の一生は本当に何があるかわからない。だから生きていようと思う。木山捷平から学んだ。2019/09/16
hitsuji023
5
満州の寒さ、情景、そこに住む人々。そのありさまが目に浮かぶようだ。平凡な文筆家の主人公がそのまま自分達庶民であってもおかしくないわけで、そこにとてもリアリティを感じた。小説中、ソ連が参戦しこれからソ連の戦車を迎え撃つ場面で終わる。2022年の現在ウクライナとロシアの戦争が起きていることもあり、それまでだったら遠い昔の事と思っただろうが、現実にあり得る事として怖さを感じた。2022/07/18
eazy
4
井伏鱒二に可愛がられた人。太宰治の同人仲間でもある。木山捷平という人はいわゆる貧乏文士。 古き良き 「士(サムライ)」の付く作家。 それは一方では「無用の人」でもある。 「有用の人」と「無用の人」の境界線上の細道をひたすら歩き続ける人。2002/07/03
seijyun
3
非日常の中の日常を淡々と・・・。一読すると二度と忘れません。
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