内容説明
母の肉は子の肉、子の骨は母の骨なり……。いのちの哀しさ尊さに突き当りながらも、虚無と喧噪のなかで人間の業(ごう)から逃(のが)れられない男たち、女たち。だが、そういう彼らも、いつしかオラシオンの美しさ危うさに魅せられて一体化し、自らの愛と祈り、ついには運命そのものを賭けていった。やがて迎えるダービー決戦――。圧倒的な感動を呼ぶサラブレッド・ロマン。吉川英治文学賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
270
(上から)傑作。主人公と同じ鳥肌とともに読了。すべてを日本ダービーという挑戦へ集約させる圧巻の筆力。サラブレッドの競争自体が人間の利己。登場する人物たちの振る舞いも利己的だと表現する。しかし発露する無意識で僅かな利他が繋がりを紡ぐ。その実体に適当な言葉はなく「偶然と必然の運命がもつ共通概念」「哀しさと歓びが同質の愛しさ」「逢う前からの愛情」「人間の工夫は知恵ではない」「それまで止まって動かなかったもの」だと。岩波剛さんの解説が言い当てる「現実や人智を超えるものを信じることで、逆に人間の生の真実に迫る」と。2020/06/27
ykmmr (^_^)
99
後半。オラシオンの走りのように、物語・登場人物たちの人生物語も佳境に入る。久美子の父は、明暗の感情の狭間の中で、血を分けた息子を弔い、その失意が喪失しないまま転職。自分の行為に奈良や多田は責任を感じながらも事を見守る。博正と久美子の関係は余韻を残す展開であった。そして、皆の『想い』を背負った黒馬は、皆の『人生』のようなフィールドを一気に駆け抜けた。2021/10/14
美雀(みすず)
87
北海道の小さな牧場で生まれて、沢山の人々の夢を背負って走るオラシオン。それぞれの人生と重なるようにして。いくつもの試練を乗り越えるのは人も馬も同じなんだなと思います。これからも沢山の夢を背負わされる優しい生き物を温かな目で見守って行くんだろうな。2015/04/22
kk
77
特別な血と願いを享けてこの世に生まれ出でた一頭の仔馬。その誕生と成長によって、人々の心の中で止まっていた、それぞれの大切な何かが動き始めます。生産者、調教師、馬主、騎手、競馬記者など、この馬を取り巻くさまざまな人たち。彼らの思惑、愛憎、そして夢と祈りを乗せて、我らがオラシオンはまた今日も闘いの庭に臨むのです。生まれてこの方、競馬なるものには全く興味がなかったkkですが、ふとしたきっかけで読んでみたこの物語、素晴らしかったです。お馬にハマってしまいそうです。2022/07/03
みゆ
74
下巻、一気読み~ヽ(^o^)丿 競馬って所詮は博打。でも生産する牧場も博打、購入する馬主も博打、育成する厩舎、騎乗する騎手も博打。皆それぞれに夢と野心を持ち、ひたむきに燃え上がる。馬や風景の美しさ、レースの迫力もさることながら、人間ドラマに熱くなりました('∇^d)☆!!2023/04/30
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