内容説明
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように……。若者の祈りに応(こた)えて、北海道の小さな牧場に、一頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇(ドラマ)が、幕を開けた――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
259
サラブレッド。Thoroughbredが元来もつ「徹底した人為的育種」を批判的に抱えながらの読書。サラブレッドは競走成績で冷酷に評価される。良い牝馬に良い牡馬を人為的に交配させ、良いサラブレッド産出を目指す。しかしそれらの成績は必ずしも血統に依拠しない。静内の弱小厩舎で産まれた奇跡的なサラブレッド。それに関わる人々の人生を対比しながらそれに重ねる。馬主の社長の娘は何不自由ない環境だが、不倫の息子は恩恵を受けないだけでなく死が迫る。娘の寛容性と叩き上げ秘書の論理性、エリート騎手と叩き上げ騎手も描写(下に)。2020/06/17
遥かなる想い
125
斉藤由貴を思い出す本小説は確かに面白かった。登場人物が持つ「想い」がよく描かれていた。2010/05/09
ykmmr (^_^)
107
北海道の弱小牧場に産まれた競走馬候補、『オラシオン』を軸に、その馬の人生に関わる人たちの物語。どんな事でも、1つの物を生み出す事に様々な過程がある事は言うまでもないが、馬育て・牧場の運営などの当たり前の内容の中に、恋愛・友情などの話題を組み込まれ、それが上手く纏められている。博正と久美子の関係が、著者の代表作『螢川』・『青が散る』を彷彿とさせる。複雑な過去を持つ、久美子の父のこの先も含めて、下巻を早く手を取るように、輝さんに誘導されてしまう。2021/10/11
おしゃべりメガネ
97
1986年の作品で、今から40年前になります。映像化もされており私も含め、とある年代の方にはそちらのほうが印象に残っているかもしれません。ちょっとした縁で、北海道は胆振日高エリアに行くコトが多くなりそうなので、こちらの作品を手にとりました。装丁そのままの競馬馬育成の話で、そのドラマに様々な人間模様が重ねて描写されてます。生産者、馬主、調教師、騎手とそれぞれの目線から語られる競馬馬への思いがこの上なくリアルに綴られており、競馬に興味、関心がない読者でもさほどストレスを感じるコトなく、読み進めていけるかなと。2026/09/17
mike
89
競走馬の話。夢とロマンと愛に溢れた美しい世界…ではなかった。金とエゴと嫉妬にまみれたドス黒い世界の話だった。これまで競馬界の美しい物語を読んできた私には、人間の本心を突いたこの昭和感漂う重厚な物語は、ある意味とても新鮮だった。嫉妬と怒りが生んだ小さな悪意。これがもたらした衝撃的な結果には、息をのみ心が震えた。オラシオンが競走馬として活躍するであろう下巻。これまで登場した主要人物の行く末はいかに。2026/04/30




