内容説明
陸軍からもほぼ姿を消したかにみえた脚気病は,「日清・日露戦争」において再三猛威をふるった。脚気による損害が,戦闘による損害をはるかに上まわったのである。それは陸軍軍医の中枢を握る反麦飯派が戦時体制を利用して戦場に白米を送った結果であった。
さすがに戦後は「戦場での大量殺人犯」を追求する声がわきおこった。しかし,森林太郎(鴎外)・青山胤通の東大医学部コンビはそれを頑としてかわし,「米ヌカ」の研究を弾圧しにかかったのである。しかし,それは都築甚之助の新薬開発を加速することになった。
一方,植民地における奇病「ベリベリ」の研究から,欧米の医学者たちの関心は米ヌカに含まれる新物資にそそがれるようになっていた。その情報に愕然とした医学界の中枢は,混乱の中にも栄光の横領にとりかかる……。真理はいかにして決まるか。ビタミン発見前夜の科学者の熱い戦いを描き,創造性のメカニズムを浮き彫りにする壮大な科学史ロマン。
★★ もくじ ★★
第四部 頑迷なる秀才が天下をとったとき
エイクマンの〈ニワトリの白米病〉の発見と追試
第五部 日露戦争における脚気大量発生問題
臨時脚気病調査会の成立
第六部 日本での脚気の部分的栄養欠乏説の成立
新しい脚気研究の時代を開いた人々
第七部 「ビタミンB1欠乏説」の確立
日本における脚気の絶滅
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