内容説明
戦後、多くの日本人は、蒋介石を「東洋道徳の権化」のごとくに考えてきた。曰く「天皇制を護持してくれた」。曰く「対日賠償請求権を放棄してくれた」。曰く「支那派遣軍と在留日本人を無事に送還してくれた」云々。しかし、これらの蒋介石神話が半ば虚偽であったことは今日既に明らかにされている。蒋介石の幕僚は、天皇を戦犯リストに加えているし、蒋は日本へ賠償を要求している。大陸から日本の兵隊や民間人を急いで帰したのも、蒋の軍隊が百戦百敗した強力な支那派遣軍を刺激せぬためだ。多くの罪もなき日本人を戦犯裁判で処刑したのも蒋の政府である。権力によって意図的につくられた神話はいずれは崩壊する。本書は、蒋介石ばかりでなく、中国近代史をつくりあげ、後に神格化された孫文、毛沢東の実像にも迫りながら、中国文明の本質を明らかにしていく快著である。
目次
第1章 次男・蒋緯国遺書の怪
第2章 蒋介石と日本
第3章 蒋介石伝説の謎
第4章 蒋介石の死敵
第5章 天下人への蒋介石版「我が闘争」
第6章 国共内戦
第7章 蒋介石の危機と運命
著者等紹介
黄文雄[コウブンユウ]
文明史家、評論家、拓殖大学日本文化研究所客員教授。1938年(昭和13年)、台湾、高雄県岡山鎮生まれ。1964年(昭和39年)来日。1969年、早稲田大学第一商学部卒業。1971年、明治大学大学院政治経済学研究科西洋経済史学修士課程修了。日本と台湾を執筆活動の主軸とし、言論活動をアメリカ、ヨーロッパでも展開。台湾では、1994年、『台湾人的価値観』で巫永福評論賞および台湾ペンクラブ賞を受賞。漢文著書約30余冊を執筆し、台湾言論界で大きな発言力を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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