内容説明
共産党と水平社は、ともに近代日本の汚辱のなかから生まれ出た栄光の結社であった。それがなぜ、どうしようもない敵対関係に陥ってしまったのか。同和対策は毒まんじゅうか?糾弾イコール暴力か?利権とはなにか?共産党と解放同盟の蜜月がひび割れ、暴力的対決に至った真相をめぐってかわされる両氏の議論は、日本の社会運動のあり方をめぐる本質論となる。
目次
第1章 蜜月の時代に生まれていた対立の萌芽
第2章 同和対策は毒まんじゅうか―解放同盟内での対立
第3章 矢田事件、八鹿事件―同盟と党の暴力的対立
第4章 全面的な路線対立・組織対立へ
第5章 部落解消論と利権問題
補論 日本共産党と部落解放同盟対立の歴史的・社会的背景
著者等紹介
筆坂秀世[フデサカヒデヨ]
1948年兵庫県生まれ。元共産党常任幹部会委員。高校卒業後18歳で日本共産党へ入党。95年参議院議員初当選。党ナンバー4の政策委員長、書記局長代行をつとめる。2003年に参議院議員を辞職。2005年離党
宮崎学[ミヤザキマナブ]
1945年京都生まれ。父は伏見のヤクザ寺村組組長。早稲田大学中退。早大在学中は共産党系ゲバルト部隊隊長として活躍。週刊誌記者、家業の土建業を経て、96年に自身の半生を綴った『突破者』で作家デビュー。その後もアウトローの世界をテーマに執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
15
部落解放同盟と日本共産党の相違は、人間優先かイデオロギー優先かの違いではないか。かつて職場に、地区出身で党員の人がいた。麻生太郎の野中広務への差別発言等、差別解消がなされていない現実に目をつむり、ただただ同和対策が時の政府によって推進されることに嫉妬し、差別はもうないと強弁する共産党。その人も党の方針に同調せざるを得ず、同情を禁じ得なかった。怒りさえ覚えた。党員は細胞ではない。人間である。2019/08/13
モリータ
11
◆2010年刊。構成としては、宮崎の緒言、司会(大窪か?)・宮崎・筆坂の鼎談、大窪一志の補論、筆坂のあとがき。◆共産党・解同の複数の段階にわたる対立から衰退を記述。著者はいずれも共産党・部落差別問題にゆかりが深く、かつ組織内部の論理から距離をおいて双方の思想・運動の問題点を指摘している。党の高度経済成長期の説明なしの方針転換とその背景、「利権」と「特権」の話なども面白かったが、三者に共通する差別・人権観(コメで引用)は傾聴に値すると思う。◆他方「糾弾」とは何なのかがまだよく分かっていないので、続く類書へ。2021/01/28
もみひげ
3
馴染みのない人物名も多く、難しかった。共産党と解放同盟の歴史や課題が学べたが、もっと勉強が必要。革命と差別のない社会という最終目標が違うのだから、仲違いは当然ということか。片方が実現しかけたら、片方が慌てて足を引っ張ったという構図に思えた。人権を確立しても差別はなくならないという意見は面白かった。やむを得なかったのだろうが、革命から革新へと変節した共産党の変わりっぷりが興味深かった。しかし、筆坂の名前に惹かれて手にとったのに、司会と宮崎ばかりがしゃべっていた印象だった。2013/01/05
都人
2
宮崎氏は「建設業の談合の歴史」について書いた本を読んだ記憶がある。 まさに論客という感じで、さすがの筆坂氏も押され気味。2012/02/26
U-Tchallenge
1
日本共産党と部落解放同盟の対立について書かれた一冊。対立には歴史があり根深いものがあるように思った。著者たちの思いが強くあるところもあるが、共産党に対しての批判が多いように思った。差別はかつてより少なく見えにくくなってきているだろう。しかし、差別があるという現状は確かに理解しないといけないだろう。団体は違えどもその現状を理解し、差別をなくすための取組は必要ではないだろうか。2025/03/11