内容説明
今までどうしても解けなかった部落差別の謎―それはケガレ意識との関わりだ。部落差別とケガレ意識をワンセットでとらえる見方は従来からあった。だが、それだけでは「生来のケガレ」として代々世襲され、「出自」を理由に結婚などを忌避される、世界にもまれな差別が成立した理由が説明できない。長年にわたり自らの問題として考察し続けてきた著者が、その謎を鮮やかに解きあかす。
目次
1 部落は「社会外の社会」ではなかった(なぜそこに部落があるのか;部落差別とは何か―忌穢・触穢、職業、身分の一体化;部落差別の三要素)
2 江戸時代に根固めされた身分制度(検地、刀狩、身分統制令の大目的;キリシタン弾圧と身分制度―江戸時代;忌穢・触穢と身分制度)
3 ケガレとキヨメ(再生機能を担う部落文明・部落文化;部落文化の個性)
著者等紹介
川元祥一[カワモトヨシカズ]
1940年兵庫県生まれ。岡山県津山市で育つ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あきら
4
部落の歴史と文化を認める事。これが部落差別を解消する第一歩となる。今回部落とは何か、これを知るために手に取った一冊。穢多非人という、かつては身分区分ではなく職業区分の呼び名がそのまま差別的扱いを受けるようになり、彼らの行っていた仕事が穢れを伝播させるとして差別を受けるようになった。しかし、彼らの仕事は死んだ牛などを革製品へと加工するカワタや下級警察としての町の警備などといった社会に必要なものであった。死んだものを扱うという穢れが伝播する触穢意識が現代まで続く差別となっている。過去を知り正しい理解が必要だ。2022/03/04
Punk!Punk!Punk!
0
部落の歴史と文化をまるごと認める。江戸時代のキヨメ役の職業を基にした文明と文化、生活文化や伝統芸能をまるごと認めることであり、差別の基盤になった差異を認めることと著者は述べる。元は673年天武天皇命「牛、馬、犬、猿、鶏の肉を食べてはならぬ」の肉食禁止と共に、牛馬などを解体、加工する者が賤業視され、江戸時代、特に5代将軍綱吉の「生類憐みの令」は肉食禁止と触穢意識を強め 固定された。この頃皮多から穢多の呼称が一般化し、動物の皮や肉を利用しながら その処理は穢れとしキヨメを卑しい身分にさせるという考えが起こる。2014/04/14
hi
0
部落とか同和とか、学生の時にチラッと聞いただけで実際全然知らないなあと思って借りてみた。こういう問題って諸説ありそうなので、また別の著者の本も読んでみたい。なんか文に冷静さがないようなので気になるし2011/10/23
U-Tchallenge
0
部落差別を「キヨメ」と「ケガレ」という視点から考えてみる、という一冊。ただだだ「差別はいけない」と言うだけでなく、部落が担った仕事や創った文化について知ることで部落差別の別の側面が浮かび上がってくる。部落が担った仕事や創った文化というのは、歴史学習ではなかなか日の目が当たらないところだろう。僕も部落差別を自分なりに学ぼうとして初めて知った。部落が担った仕事や創った文化と部落差別を絡めながら、伝えていくことが必要なのかもしれない。部落問題について学びたい者にとっては必読の一冊である。2020/08/23
U-Tchallenge
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人権教育を学ぼうとしてみると、同和教育ということを目にするようになった。また、同和教育を学ぼうとしてみると、部落差別ということを目にするようになった。ということで、部落差別について考えてみたく手にした一冊。部落差別の一端を確か学習したことを思い出す。身分制等。でも、部落の歴史や文化はそこだけではない、ということがわかった。部落の歴史や文化は、現在の自分たちの生活に根づいているものが多くあることがわかった。ネガティブな面だけでなく、こういうポジティブな面を知ることで、少しイメージが変わるだろう、と思った。2020/06/15
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