内容説明
文豪五十九人の借金名言集。
目次
1章 泣きつく(太宰治「太宰治の手紙」;尾崎放哉「書簡」 ほか)
2章 途方に暮れる(樋口一葉「日記」;石川啄木「悲しき玩具」 ほか)
3章 踏みたおす(川端康成「借金の名人・川端康成の金銭感覚」(梶山季之)
坪田譲治「借金について」 ほか)
4章 開きなおる(葉山嘉樹「集金人教育」;坂口安吾「詩境と借金」 ほか)
5章 貸す(夏目漱石「書簡」;尾崎士郎「借金について」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レモングラス
89
赤塚不二夫さんがトキワ荘で漫画家になるのをあきらめようとしていた頃の寺田ヒロオさんの優しさを書いた「二十万円の金を出してきて、これで頑張れよともいってくれたのである」が読みたくて手に取った。代表作『スポーツマン金太郎』、傑作の『くらやみ五段』をお読みになった人なら感じていたはずのテラさんの優しさとある。詰め込みすぎずテーマはしぼってと忠告し、ちいさくちいさく縮こまった気持ちから脱出するショック療法をとってくれた。このお金はちゃんと返さなくてはと背筋を伸ばす。『笑わずに生きるなんてぼくの自叙伝』収録の随筆。2022/10/02
鱒子
79
図書館本 文豪の借金にまつわるエッセイや手紙。悲痛に飲み込まれてしまいそうな文章、ユーモアとペーソス溢れる文章が溢れています。武者小路実篤の細かさ、豊島与志雄の実直さ、貸し借り両方に出てくる唯一の人物は吉行淳之介。68編よくもまあ集めに集めた!と思いますが、まだまだ沢山ありそうですね。 やはり石川啄木と百閒先生は借金界のスーパースターだなぁ(笑 2020/06/18
tomi
35
作家が文士と呼ばれていた頃、知人に借金することは当たり前だったのか? 多くの文士たちの借金にまつわる文章を集めたユニークなアンソロジー。借金の大家・内田百閒はもとより、「ふざけたことに使うお金ではございません」と頼み込んだ金がクスリの代金に消えた太宰治、啄木の六十余名からの借金リスト(当然踏み倒してます)、川端康成もなかなかの強者です。葛西善蔵の「四十を越していて、月二百円いるものを百円足らずも稼げないのだから、低能だと言われても仕方のない訳だ」という一文は身に沁みる。2020/08/29
あなほりふくろう
26
石川啄木のずらずら並ぶ借金リストをみたあとに「弱い心を何度も叱り、金かりに行く」強い!心を!もって!……おい。泣きつく。途方に暮れる。踏み倒す。開き直る。貸す。なかなかにクズい景色が繰り広げられて。「盗人にも三分の理」盗人じゃないけど三分どころか三厘くらいだろこれ。「自分が孤独でないことを確認する」一瞬頷きそうになったけどこれも割と詭弁ですねひどいいいわけですよね(苦笑) でも、このクズい連中のまったく下世話な風景に、これが通用した世の中に、それでも何とかなるみたいなおおらかさを感じて微笑したのでした。2020/06/14
マカロニ マカロン
15
個人の感想です:B。樋口一葉が「途方に暮れる」の先頭で「昨日より、家のうちに金といふもの一銭もなし」一葉も借金を返さなくても平気な顔をしていたと言われるが、本書を読むと、太宰や啄木など相当質の悪い借金王だ。「開きなおる」で色川武大さんが「作家は、女房の実家の財産を食うくらいじゃないと、本物とは言えないんだよ」と顰蹙ものの発言を夫人が記録している。2019年大河ドラマ「いだてん」でもやったが、五代目古今亭志ん生さんが席亭からもらった金を全部吉原で使い果たし、汚い姿で真打ち披露の高座に上がった武勇伝も出ている2020/12/27