内容説明
文士・大陸浪人・天皇―。歴史の輝かしい舞台を際立たせる影のように、孤独な存在者たちがうごめいている。光にしたがう影として扱われてきた彼らに色彩を与える、新たな歴史の可能性を探求する。
目次
序論
第1章 神の死―応仁の乱と明治維新
第2章 法外なるこの世界
第3章 精神から存在者へ―言文一致運動と大逆事件
第4章 大陸浪人の地理哲学―武士と資本主義
第5章 死と天皇―民衆史を越えて
結論
著者等紹介
田中希生[タナカキオ]
1976年、京都府生まれ。京都府立大学卒業。博士(歴史学)。現在、奈良女子大学人文科学系准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
なんとも不思議な本だった。本書は近代の歴史に関する本ではあるが、従来の歴史学や社会学といった枠組みでは捉えられない領域を描いている印象。居場所をなくした孤独な存在者として、元武士である大陸浪人や文士、神々の世界から追放された天皇にも焦点を当てている。とりわけ明治維新以後、家、土地、国を追われた元武士たちが、憲政の外部の存在としてさすらいながら大東亜戦争に居場所を求めたとの議論は興味深かった。ただ、《存在》や《場》の概念についての哲学的素養を持たない自分は、本書のエッセンスを十分に汲み取れていないと思う。2023/10/13