内容説明
「陶芸家の鹿児島睦さんの展覧会が開かれます。新作の器を見て、そこからお話を作っていただけませんか」依頼を受けた作家の梨木香歩さんは、色や形のさまざまな器に草花に馬や象、蛇などの生き物が描かれた200点の作品を1枚づつ、何度も繰り返し見ながら物語を紡ぎました、梨木さんの物語を受け取った鹿児島睦さんは、何度も読んで反芻し、ラストシーンに新しい1枚を制作しました。このようにして生まれた本です。水たまりを見つけのぞき込む馬のように、水たまりに棲む蛇に、会いにいってください
著者等紹介
梨木香歩[ナシキカホ]
作家
鹿児島睦[カゴシママコト]
陶芸家、アーティスト。美術大学卒業後、インテリア会社勤務を経て、創作活動に専念。福岡市内のアトリエにて陶器やファブリック、版画などを中心に制作している。日本国内のみならず、ロサンゼルス、台北、ロンドンなどで個展を開催。国内外のブランドへの図案提供、国際的なアートプロジェクトへの参加など、その活動は多岐にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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KAZOO
116
梨木さんの作品集と思っていたのですが、どちらかというとこのカラフルな器が主題なのですね。鹿児島睦さんという方がつくられた器に合わせた小文を梨木さんが紡いでいかれたようです。最初は絵かと思っていたのですが、見ていてなごむような感じを与えてくれます。現物を見てみたい気もしました。2024/03/08
Ikutan
70
先ず手に取り、豪華な装丁を眺めてうっとり。陶芸家の鹿児島睦さんの新作に、梨木さんが物語を紡ぐ。そして、新たに、鹿児島さんが最後の一枚を添えたという。物語は、群れを出た馬が、蛇の棲む水たまりを見つけたところから始まる。不思議な風、鳥の歌や動物たちのざわめき。覗いてみると...。優しい表情の動物たちや美しい草花。馬が見たのは夢か幻か。束の間の美しく不思議な世界が、ふわりと心を包んでくれる優しい優しい物語。2024/01/16
ふう
69
挿絵が実際にお皿に描かれたものだと知らずに、(この美しい絵をお皿に描いて壁に飾りたい)と思ってしまいました。先にお皿が創られて、その絵に梨木さんが、心の奥の大切なものに語りかけるようなすきとおった物語を創ったのですね。『水たまりの外から見たら ただの蛇さ それが好きなんだ 龍とか 蛇とか どうでもよくなる でも 龍でもあり 蛇でもある そんな感じがね 好きなんだな』ユニコーンになりたかった馬も、風を切って走っているとき、きっと自分の中にユニコーンがいるとわかったのでしょう。馬でもあり、ユニコーンでもあると2024/06/16
吉田あや
62
梨木さんに導かれる森の中で、鹿児島さんから生まれた水たまりの幻想を旅する至福の時間。群れを出て森に入り、森を出て次の森に入る手前で見つけた蛇の棲む不思議な水たまり。小鳥、花、蛇、全てがまるく調和した楽園のような世界で、猫はライオンに、犬はクマに、犬はトリケラトプスへ。ユニコーンになりたくて群れを離れた馬はその水辺から泣き声を聴き、中を覗くと…。鏡の国に通じるような世界の中で、しっとりと零れるユニコーンのなみだ。(⇒)2023/12/18
pohcho
59
梨木さんの文章で絵本なのかと思ったら、絵皿と知ってびっくり。しかも絵皿を見た梨木さんが物語を紡ぎ、物語を受け取った陶芸家さんが最後の一枚を制作したという。なんと贅沢なコラボなんだろう。猫がライオンに、犬がクマに、ゾウがトリケラトプスに。みんながなりたいものになれる水たまりの国。もう一人の自分を見つけて。よくよく見つめて・・。でも、水たまりは乾いて消えてしまうのだ。儚く不思議な物語と美しい絵皿たち。装幀も可憐でとても美しい本だった。うっとり。2024/02/28