内容説明
Lの運動靴を最大限修復するか。最小限の保存処理だけですませるか。何もせずに放っておくか。レプリカを作るか。何もしない修復もやはり、修復のうちに入る。分析だけして何の治療もしないことも。―物質と記憶をめぐる物語。
著者等紹介
キムスム[キムスム]
1974年蔚山生まれ。本名キム・スジン。大田大学社会福祉学科卒業。97年「大田日報」新春文芸に当選、98年文学トンネ新人賞を受賞し、文壇デビュー。現在、韓国で最も活躍している小説家の一人。現代文学賞、大山文学賞、李箱文学賞などを受賞
中野宣子[ナカノノリコ]
韓国語・朝鮮語翻訳、講師。1987年、韓国延世大学校韓国語学堂に語学留学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
26
小説というより心象風景を綴ったエッセイみたいでした。まず冒頭のエピソードでぶっとんだ。とんでもないもので芸術品作る人がいるな。2022/12/11
あおでん@やさどく管理人
22
【第47回やさどく】美術品修復の世界に初めて触れた気がするが、「どのように」修復するかだけでなく、「どこまで」修復するかというのが重要なのだと思い知る。ひとつしかない品だからこそ、失敗は許されない。美術品修復の繊細さ、そして息を詰めるような作業の様子が伝わってきた。2024/05/05
二人娘の父
12
翻訳家・小山内園子さんがNHKラジオで語っている「カルチャーラジオ 文学の世界 “弱さ”から読みとく韓国現代文学」で紹介された作品。Lとは李のローマ字表記Lee頭文字。靴に焦点を据えたこと、そして何よりも記憶とはを正面から描いている点に感銘を受けた。韓国・朝鮮社会が負ってきた歴史は、それを記憶し伝える人たちがいるからこそ、隣国の私にも届いている。そんな単純な事実の背景にある人々の心の動き、苦しさ、想いを感じることができる作品である。素晴らしい韓国文学に、また出会ったのだ。2023/03/19
たなべそら
11
運動靴を修復するという、あまり普段目にしたことのない題材。修復家として、Lの運動靴を修復するかどうかの心の葛藤が、そして修復家としての矜持が、静かに伝わってくる。繊細なものを修復するという、根気のいる作業の連続から生まれる緊張感。修復家が真摯にLの運動靴と、その時代を生きた人達の歴史と思いとも対峙していることをひしひしと感じる。文章を読んでいるだけなのに、まるで自分がその場にいるような気持ちになる不思議な感覚。今まで読んだことのない世界観を堪能。秋の夜長に物事をじっくりと考えたい人にオススメの一冊。2022/09/04
spatz
11
暗い場所に光が差し込んでいるような色合いの画面に置いてある断片のようなものは、その靴なのだろうか。たくさんの断片的な物語が組み合わさった、寂しげな物語だった。Lとは誰なのか。解説や訳者あとがきによれば、<李韓烈(イ・ハンニョル):1987年6月9日、延世大学で開かれたデモの最中、警官が発射した催涙弾に頭を打たれ、約1カ月間生死をさまよい、20歳で亡くなった>。倒れた彼の写真は世界中の人の目に触れ、民主化運動の象徴的存在だという。 #NetGalleyJP2022/06/21
-
- 和書
- 労働組合法講話