内容説明
1990年代末、イタリアの一地方で小児性愛、悪魔崇拝などのカルト犯罪が発覚。捜査の結果、16人の子どもたちが家族から引き離され、両親や親族がつぎつぎに逮捕されるが、20年後、著者の調査によって明らかになった衝撃の事実とは―?イタリア現代史上、最も不可解なカルト事件の真実。イタリアの優れたジャーナリズムに与えられる「エステンセ賞」受賞作。
目次
フィナーレ・エミリア、一九九五年四月一日
第1部 汚染
第2部 沈んだ世界
第3部 亡霊の群れ
第4部 二十年続いた夜
著者等紹介
トリンチャ,パブロ[トリンチャ,パブロ] [Trincia,Pablo]
1977年、ドイツのライプツィヒに生まれる。新聞、テレビ、ウェブサイトの特派員やライターとしてキャリアを積む。2015‐17年、同業のアレッシア・ラファネッリと協力して、『バッサ・モデネーゼの悪魔たち』は、2020年にジャーナリズム分野の優れた著作に贈られるエステンセ賞を受賞。2021年にはイタリアのamazonがドキュメンタリーシリーズを制作し、大きな反響を呼んでいる
栗原俊秀[クリハラトシヒデ]
1983年、東京都に生まれる。翻訳家。カルミネ・アバーテ『偉大なる時のモザイク』(未知谷、2016)で、須賀敦子翻訳賞、イタリア文化財文化活動省翻訳賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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茜
56
本書は1990年代末に北イタリアの一地方であるバッサ・モデネーゼでいくつもの家庭を巻き込んだ児童性的虐待の事件の経過と顛末を記録した本だ。驚くことに児童に性的虐待を行っていたのは、その両親や親戚、兄弟たちだった。ひとりの子どもの証言が周りの大人達を犯罪者へと叩き落していき、子ども達は両親などから引き離されて養子に出された。そして、その子どもに倣うように証言は他の子ども達へと伝染していく。そこにはある一人のソーシャルワーカーの影響があった。 2022/12/11
rosetta
33
21世紀を目前にしたイタリアでまるで中世の暗黒時代のような犯罪が告発された。親や親戚に性的虐待を受け、人身御供を伴う悪魔的儀式に参加させられたと複数の幼児が証言したのだった。彼らは貧しい親から引き離され、同じカウンセラーに委ねられていた。作者は事件の20年後に再調査し冤罪であったことを確信する。日本の児童相談所が及び腰過ぎて不幸な子供を救えないのとは逆にイタリアでは簡単に親権を剥奪される。世の中で最大限に尊重されなければならない子供の幸せを実現するための手段がボタンの掛け間違いのように不幸を再生産する2022/12/15
星落秋風五丈原
18
実の両親や家族による性的虐待とは酷いと思っていたら途中で様子が変わってきた。2023/01/09
かもめ通信
16
1990年代末に発覚した、北イタリアのバッサ・モデネーゼで、いくつもの家庭を巻きこんだ性的虐待事案。とても悲惨な事件を扱ったノンフィクションなのだから、面白かったという言葉はそぐわないだろう。それでも手に汗握り一気読みせずにはいられなかったことは事実だ。そしてまたいろいろなことを考えさせられたことも。2022/12/14
nightbird
9
1990年代、イタリア北部の田舎町で悪魔崇拝儀式や児童虐待、複数の殺人行為まで行っていたという性犯罪者の大規模ネットワークが告発される。被害者の子どもたちは保護され、彼らの証言により加害者たちはことごとく拘束されて法廷へ。ところが…というすごい話。なんでこんなことが起きてしまったのか。犠牲者(死者)も多いし、理解できなさと取り返しの付かなさに呆然。お金なのか、名誉欲か、関係者の間でストーリーがエコーチェンバーを繰り返した末に暴走したのか。話もすごいが取材したジャーナリストもすごい。いやはや力作でした。2023/05/29