内容説明
1921(大正10)年―、雑誌『改造』の求めで連載を起こすも、関東大震災下の「甘粕事件」により、未完で遺された傑作。「陛下に弓をひいた謀叛人」西郷南洲に肩入れしながら、未来の陸軍元帥を志す一人の腕白少年が、日清・日露の戦役にはさまれた「坂の上の雲」の時代に、自由を思い、権威に逆らい、生を拡充していく―、ビルドゥングスロマンの色濃い青春勉強の記。
目次
最初の思い出
少年時代
不良少年
幼年学校時代
新生活
母の憶い出
お化けを見た話 自叙伝の一節
著者等紹介
大杉豊[オオスギユタカ]
1939年、横浜市生まれ。大杉栄が殺された当日に訪ねた弟が父であり、そこで生まれた。東京都立大学社会学科卒業。東京放送(TBS)入社、調査・営業・編成部門を経て定年退職。東放学園専門学校・常磐大学国際学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
30
少年時代は、残酷とはいえ、うーむと思った。大杉が大杉になる道は、その頃にあるんだなと納得した。面白いけれども、人に勧めるには、人を選ぶ。2022/02/03
Tom
4
日付変わって今日で関東大震災から100年となる。ということは大杉の没後100年である(命日は16日)。生まれてからの半生を綴る自叙伝であるが、連載途中で大杉が殺されたため、社会主義に目覚めて平民社を訪れたあたりで終わっている。軍人の家に生まれ、軍国少年として育ち、将来は陸軍元帥を夢見ていた。日本一有名なアナキストの意外な少年時代。幼年学校で教師に疎まれ、鬱を患い挫折する。ここから軍の強権的な態度への疑問が芽生え、後に幸徳秋水の文に触れ社会主義者となる。幼少期から本に触れ、腕白ながらも読書好きな少年だった。2023/09/01
tekka
2
「しかるに、戦争に対する宗教家の態度、ことに僕が信じていた海老名弾正の態度は、ことごとく僕の信仰を裏切った。海老名弾正の国家主義的、大和魂的キリスト教が、僕の目にはっきりと映ってきた。戦勝祈禱会をやる。軍歌のような讃美歌を歌わせる。忠君愛国のお説教をする。『われは平和をもたらさんがために来れるにあらず』というようなキリストの言葉をとんでもないところへ引き合いに出す。」2022/03/04