感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
40
芥川龍之介「或阿呆の一生」を連想。革命や戦争の嵐が吹き荒れる当時のロシアで耽美主義に抗うのは納得。勿論そういう時代だからこそ楽しい芸術や理屈抜きで綺麗なものを、と考えても誤りではない。ただ著者の場合は創作のモチベーションと新国家建設のヴィジョンが重なり過ぎていた。とはいえ、いかなるファウストにもメフィストフェレスは必要。画家ブルリュックあっての詩人マヤコフスキー。岡本太郎じゃないけど芸術家とは職業ではなく生き方。弱者の友。権力に媚びぬ反体制。彼らは未来派? 未来は一秒後の現実。ねーちゃんあしたっていまさ!2017/11/04
Y2K☮
35
画家ダヴィド・ブルリュックとの出会いが映画のワンシーンみたいだった。第一印象が最悪でのちに親友という現象は万国共通なのか。マヤコフスキーは過去の作家を認めず、ブルリュックには同時代人への怒りがある。作品の虚構性や審美性を否定した点もあるいは共通しているかもしれない。だがブルリュックの絵をウィキペディアで見た際、この人はマヤコフスキーよりも純粋な芸術家に近く、高い技量を備えていたのではと感じた。だからこそ友人の才能にいち早く気づけたのだろう。雑な見立てをするならマヤコフスキーがジョンでブルリュックはポール。2024/08/22
Y2K☮
31
プーシキンやドストエフスキー、トルストイの全否定。小山田圭吾と小沢健二の「フリッパーズ・ギター」や凱旋帰国直後のオカダカズチカにも通ずる「奴らは全て過去。俺だけが現在」という手法の肝は先入観の反転である。評価が安定している、長い間人々に愛されている、有名な賞をもらっている。だからいい、となっていた所へ、だからもう今はダメ奴らは成功に胡坐を掻いて錆びていると真逆のイメージを植え付ける。この扇動性は反面自信の無さの表れだが、我々がそれを見下すのは動物園の猿が人間を嗤うようなもの。尖れる年代なら尖る方が自然だ。2019/10/22
cockroach's garten
24
ロシア未来派、ソ連を代表する詩人マヤコフスキーがどのように出来上がっていったのか。私は書店でマヤコフスキー叢書を偶然本屋で目にして、その詩には似つかわしい奇怪さと怒涛の疾走感に圧倒された。しかし、守銭奴な卑しき一面をもつ私の裡では、はたしてこの詩に千円の価値があるのかと訝っては買わずじまいだった。だが、常に書店へ行くと買う気は毛頭ないのにマヤコフスキーの所へ吸い寄せられる。詩を読む気になれないのなら、生い立ちから入ろうと本書を読んだ。至って普通。何の変哲なし。それなのに彼の反抗的な生き方には感銘を受けた。2017/05/29
ロビン
13
20世紀初頭のロシア未来派を代表する詩人マヤコフスキーの自伝だが、短い文章が断片的に続いていく感じで、全体像はつかめない。家族のことや、小さい頃から記憶力がよかったこと、『ドン・キホーテ』を好きになったこと、初めて書いた詩のこと、15歳の時に加入したロシア社会民主労働党(ボリシェヴィキ)のこと、3度にわたる逮捕と投獄、戦争のことなどに言及している。そして巻末の「社会の趣味を殴る」ではアカデミー、プーシキン、ドストエフスキー、トルストイを「現代という名の汽船から投げ捨てるがいい」と叫ぶ。パンチがきいている。2024/03/07