出版社内容情報
イスラムの、豊かな意味の世界
イスラムの教えに従って生きるとはどのようなことか。「食べる」という、人間に共通する普遍的な行為をとおして、教義や儀礼を単純になぞるだけでは知り得ない、そこに広がる豊かな意味の世界を読み解く。現代イスラムのリアルな姿に迫る、平明にして深い洞察に満ちた、現代の新たなる宗教論。
【本書の目次より】
第1章 イスラムにおける食
第2章 食物規範とその実践
第3章 意識化される食行動 ──規範とアイデンティティ
第4章 ラマダーン月の断食
第5章 祝祭の時としてのラマダーン月
第6章 「慈悲深き神の食卓」
第7章 人をつなぐ食
【著者紹介】
八木久美子(やぎ・くみこ)
1958年大阪府生まれ。東京外国語大学大学院教授。専門は宗教学・イスラム研究。著書に『マフフーズ・文学・イスラム――エジプト知性の閃き』(第三書館)、『アラブ・イスラム世界における他者像の変遷』(現代図書)、『グローバル化とイスラム――エジプトの「俗人」説教師たち』(世界思想社)、共訳書に『エドワード・サイード 対話は続く』(みすず書房)などがある。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Matsuko
11
世界の三大宗教、的な教義や成り立ちをまとめた本はいくつか読んだが、どうも頭に残らなかった。本書はイスラムを生活に密着した「食」からみるという事で、ある一つの視点からではあるが、私にとっては馴染みのないムスリムのヴェールの奥を垣間見る貴重な体験ができた。エジプトという限られた地域の話ではあったが、ムスリムが何を大切に思い日々の行動の規範としているかはイスラム教の概要を記した本を流し読みするだけでは決して察することはできない。グローバル化された現代におけるムスリムの生活の変化にも言及してあり大変興味深かった。2016/09/07
るりこ
5
とても面白かった。イスラム食文化にとても興味を持った。ラマダン月に近くのモスクとか行ってラマダンテーブルのご相伴にあずかりたいな。デュフフ。言っとくけどかなり面白いで。2016/04/17
佐藤丈宗
3
教義に関する知識はいらない。テーマはイスラームの「食」。中でも半分近い紙幅を割いているラマダーン(断食月)の部分はエッセイのように読みやすい。断食月なのに太るのはなぜか。この月に売られるマクドナルドの特別メニュー…等々、イスラームに関係なく面白いトピックも豊富。豚肉ダメ、飲酒ダメ、断食アリ。日本人から見るとイスラームの食は制限のある厳しいものに見えるかもしれない。しかし、筆者は言う。そうしたルールの先には豊かな意味の世界が広がっている、と。今を生きるムスリムのリアルが伝わってくる良書。2016/07/11
co1024
3
イスラーム関係の出版物はISが世間を賑わして以降沢山出ているけど、「食」という身近で斬新な観点からまとめた本は珍しく、面白い。自分もエジプトで3週間ほどラマダーンを経験したが、現地の友達に招かれて胃が弾けるほど食べたこととか、ナイル川ほとりで日中暑すぎてコーラ飲んでたら怒られたこと、夜中まで続く渋滞と喧騒等々色んなことを思い出した。2016/05/22
MORITA
3
貧富の区別なく共通の経験(断食)を通してムスリムとしての一体感を得る、ラマダーンに関する考え方がまるっと変わった。一方的なルールの押し付けによるアメリカ式グローバリズムよりも、地域も人種も異なる人々が自発的に共通の体験をするほうが本当の意味でのグローバリズムではないだろうか。2016/03/16