出版社内容情報
菊治は、かつて父の愛人だった茶の師匠・栗本ちか子から、茶会の案内状をもらう。菊治に、弟子である美しい令嬢を紹介するというのだ。ところが茶会には、令嬢だけでなく、栗本の後に父の愛人となった太田夫人と、その娘も現れて……。時代を超えて受け継がれていく茶器と、それを扱う人間たちの愛と哀しみの物語。ノーベル文学賞対象作品。菊治のその後を描く「波千鳥」(続千羽鶴)を併録。
内容説明
菊治は、かつて父の愛人だった茶の師匠・栗本ちか子から、茶会の案内状をもらう。菊治に、弟子である美しい令嬢を紹介するというのだ。ところが茶会には、令嬢だけでなく、栗本の後に父の愛人となった太田夫人と、その娘も現れて…。時代を超えて受け継がれていく茶器と、それを扱う人間たちの愛と哀しみの物語。ノーベル文学賞対象作品。菊治のその後を描く「波千鳥」(続千羽鶴)を併録。
著者等紹介
川端康成[カワバタヤスナリ]
1899‐1972。1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て’21年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。’68(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。’72年4月16日、逗子の仕事部屋で自死(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
145
あまりに自然で、小説であることを忘れる。川端、すごすぎない!?解説で恩田陸は、茶碗は彼女らの隠喩だと云い、またかつて井伏鱒二は、太田夫人は絵志野の化身だと云ったそうだ。いずれもそのとおりなのだが、僕の印象はすこしちがう。この小説は器そのものなのだ。茶器を持ったときの触覚。立ち上がる匂い、残る色。所有することと、それができないということ。履歴。壊れる物=実在する物質であるということ。川端は、それらを小説に仕立てたのではないか。そこにある土を引っ張ったら器になった。名器にはそういう自然さがあると聞いたことが⇒2025/03/16
特盛
30
評価3.5/5。ノーベル賞受賞対象作品。茶器の歴史と人の短い人生。二部作で千羽鶴、波千鳥からなるが、後者は取材ノートが盗まれて途中で終わる。愛してはならない人、一生引きずる呪い。どう向き合うか。愛というのは呪いをかけかけられる行為か。死者の呪いはとりわけ、残された人に厄介だ。もう話す機会は永久に失われているから。主人公の菊治はそんな沢山の呪いの中で生きる。一方で数百年残る茶器。モノは時に呪物であったかもしれないが、モノは語らない。その周りの記憶はその周りの人とともに失われるが、モノだけが残る。静かに。2025/03/03
リョウ
7
主人公は亡父の元愛人から結婚相手候補を紹介されるが、その茶会の席に別の亡父の元愛人の母娘が参加し、運命を乱される。戦後の上流階級のある種の退廃的な雰囲気がこれでもかと押し寄せてくる。主人公が結婚を選んだ後の波千鳥は、不慮の出来事によって途中で執筆が終わってしまったことがあり、やや物足りない。最後はどのようにまとめるのか興味深かっただけに残念。2025/02/02
イノシシ
4
本書は細部までに主人公が彷徨うことになる太田夫人のもたらした世界とそれに対するアンチテーゼが対比されておりおもしろく読むことができた。また、主題を支えるのに重要な役割な茶碗の描写も非常に精緻で本書の読解をより豊かなものにしていた。 個人的には、本書において著者は茶碗など日本の古美術に対してその美しさを描こうとしたのだと感じた。著者がどの茶碗(或いは水差)をモデルにしたかはわからないが、実物を拝めるのであれば見てみたいと感じるものであった。2025/03/27
にゃま
2
思った以上に読みやすい。日本語がしっかりしているからかな。清らかさと生々しさ毒々しさが各々際立つ小説。茶道具が色々出てきて経験者としては面白く読めた。茶碗が妙に生々しいんだなぁ。主人公の父が元凶。2025/03/22