内容説明
周囲の世界から断ち切られた孤児や若い娘、未婚の母、囚人、孤独な老人たちの悲劇的状況をテーマにした第1部「孤独・流離」、ロシアの圧力を受け続けるウクライナという位置から見える社会的、哲学的、宗教的、倫理的な問題を詩によって表現した第2部「歴史・思索」。
目次
第1部 孤独・流離
第2部 歴史・思索
著者等紹介
シェフチェンコ,タラス[シェフチェンコ,タラス] [Шевченко,Тарас]
1814‐1861。農奴の子として生まれながら若くして絵の才能を認められ、ペテルブルクの芸術家たちの尽力で農奴から解放されて美術アカデミーに入る。その後、詩人として作品を世に問い始めたがウクライナ独立の政治運動に加わり皇帝を批判したという理由で流刑になった。圧政に苦しめられながらもウクライナ民族の誇りをもちつづけ晩年恩赦で釈放されてからもウクライナ語で詩を書き、絵も描き続けた。現在のウクライナでも人々の精神的支柱としてあつい支持を受けている
藤井悦子[フジイエツコ]
1942年生まれ。東京外国語大学ロシア科卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。ウクライナ文学研究・翻訳者。2016年に日本におけるウクライナ文学の普及、なかでもシェフチェンコの紹介で功績を評価されてウクライナからオリガ公妃勲章を授与された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
61
ウクライナの国民詩人。”わたしが死んだら、なつかしいウクライナの・・”で始まる”遺言”は曲付きで第2の国歌とされている。 19c、ロシア帝国下、農奴出身ウクライナの愛国者、溢れる才能(絵と詩)、過酷な運命。 ザポロージェ・コサックの地、ウクライナ2024/01/20
燃えつきた棒
42
表題の「コブザール」とは、ウクライナの伝統的弦楽器コブザを弾きながら、民謡や物語を歌って聞かせる吟遊詩人のこと。 シェフチェンコは、一八一四年、キエフ南方の村に、農奴の子として生まれる。十一歳で両親と死別した後、教会の輔祭のもとで働く。この時期に文学的素養が培われる。 その後、領主の召使いとなり、ペテルブルクに連れて行かれる。 それから、彼は画家に徒弟奉公に出され、肖像画を描くようになり、画家や詩人達と知り合う。彼の並外れた才能に惚れこんだ友人達の尽力によって、彼は農奴から解放される。→2022/02/06
ロビン
17
今尚ウクライナの人々にとって、抑圧に抗し、人間の尊厳を護る闘いのシンボルであり続けているという国民的詩人で画家でもあるタラス・シェフチェンコの詩集。帝政ロシアの支配するウクライナで農奴の身であったが、才能を見出されて、友人たちの助力により自由の身となる。しかしその後ロシアや、ロシアに諂って民衆を食い物にするウクライナ支配層、また現状を変えようとしない民衆に対しても批判の眼を向けた作品を書いたために逮捕され流刑に処された。弱い立場の人々の声を我が声として歌った悲惨や憤り、また祈りは、今も人の心を突き動かす。2022/02/27
Marcel Proust
8
日本では旧ソ連諸国の文学といえば、ロシア文学ばかりに光が当てられるが、ウクライナにも国民的詩人がいる。19世紀の帝政ロシア時代、詩人シェフチェンコは自国を草刈り場としたロシアとポーランドに対する怒りをよみあげる。そこに加えて詩人自身の孤立無援な境遇、過酷な現実の波に呑まれるウクライナと自身の運命を謡い上げている。詩の翻訳は翻訳の中でも一番難しいと言われるが、訳者の非常に読みやすい翻訳によって、日本の読者にも手に取りやすい。まずは小難しい歴史解釈から入るのではなく、直接詩を楽しまれる事が一番良い入口だと思う2024/01/07
nightowl
5
中島みゆきなら「異国」、「我が祖国は風の彼方」路線の詩が多い。もっとも、がちがちに詩の世界を固めている訳ではなく理解者の誰もいない個人的な嘆きと混ざり合ってマイルドな仕上がりに。寒い荒野を凍えながら独り歩く人の姿が見える。<わたしが悲しみに打ちひしがれ...>の孤独に生きる決意と善き人びとが自由を毒草として流刑地に捨てるという発想が一番気に入った。2019/03/11
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