内容説明
繁栄の底にうごめく貧しき者たちの笑いと涙、怒りと諍い、愛と諦念を、臨場感豊かに描いたメイヒュー不朽の名作!
著者等紹介
メイヒュー,ヘンリー[メイヒュー,ヘンリー] [Mayhew,Henry]
1812年、ロンドンの事務弁護士の家に生まれ、名門パブリックスクールのウェストミンスター校に入学するも退学。数年後、弁護士の道を捨てて出版界へ。最初に手がけたのは週刊誌の『フィガロ・イン・ロンドン』の編集。次いで『パンチ』誌の創刊に深くかかわる。弟オーガスタとの共著で小説“The Greatest Plague of Life”(1847年)や“Whom to Mary and How to Get Married”(1849年)なども発表
植松靖夫[ウエマツヤスオ]
上智大学大学院後期課程修了。東北学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koning
16
労働者と貧者のルポルタージュで、実際には全4冊?のうち呼売商人に関する部分の全訳。ヴィクトリア朝時代の下層階級の生活の一端を(あとがきで役者が書いているとおり)録音機器も無かった頃にこれだけ詳細に聞き取り、それを記録に残したというところはさすがというか恐るべき執念というか。先だって読んだパックス・ブリタニカに出て来るインドやアフリカの植民地へ赴任する官僚たちのように完璧に上から目線なところは流石に時代なんだけれど、そういうのを差っぴいても色々わかって楽しい1冊でした。つか、これがジョージアンなら(w2013/07/22
壱萬参仟縁
14
横山源之助『日本の下層社会』との比較研究をするとよいと思われる本。物売りは今、デフレの影響か、竿屋や焼き芋売りはめっきり減った(というよりも来なくなった)。代わりに、無料回収業者の軽トラが来たりしている。片端(かたわ101頁)は、広辞苑では源氏物語にあるようで、不完全という。障がい者を差別しないようにしてほしいが、実際は102頁挿絵のように足が不自由な男性が鳥を売っている。それにしても、多様な物売りがいるものだ。昨夜は男はつらいよで寅さんも物を売っていた。そうした生き方は昭和を思わせる。2013/12/22
timeturner
6
『ロンドン路地裏の生活誌』とだぶっているんだろうなあと思っていたら違った。メイヒュー恐るべし。どれだけ大量に書いたんだ! 面白いし資料的価値大。ソフトカバーなのもうれしい。2013/08/09
シルク
5
「パンにバターをつけて、お茶を飲んで生きているんだ。バターがない時もあるけど。バターがあれば、三回の食事で四ポンドのパンを食っちゃうよ。」(p.104)ある街頭商人の声が残されている。今から250年程前のロンドンに生きた青年。「家に帰ったら、パンをいっぱい食ってもかまわないよね?」(p.105)彼は鳥を商っていた。身体に障害を持つ彼。彼はその手につけた技術によって、商売の術によって、何とか自分を食わせていた――それがギリギリだったとしても。……ヘンリー・メイヒュー(1812~1888)はジャーナリスト。2018/02/15
百木
3
ヴィクトリア朝時代の庶民の生活を知る上での資料的価値も勿論あるのだろうけど、商売のやり方や実際の売り口上、その品物の市場規模などに至るまでの詳細なリサーチがなされ、時にインタビューを通して商人たちそれぞれのストーリーも垣間見えるのはドキュメンタリーとしても面白い。2018/08/14